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フォルトゥナ28

「おはよう」

「!! おはようございます!」

 目を覚ましたフォルトゥナへとヒヅキが朝の挨拶をすると、眠気の残っていたフォルトゥナは完全に覚醒して勢いよく挨拶を返す。

 そのままヒヅキの上からフォルトゥナが降りると、ヒヅキも上体を起こした。

「よく眠れたようだね」

「は、はい! ヒヅキ様を感じられて幸せでした!」

 緊張したような返事の後に、フォルトゥナは蕩けた笑みを浮かべる。

 それを見たヒヅキは苦笑っぽい笑みを僅かに浮かべた後、ベッド横の床に置いた背嚢を取ってから、中から木の実を幾つか取り出す。

 それをフォルトゥナに差し出しながら、ヒヅキは昨晩思い出した事を尋ねる。

「そういえば、私はフォルトゥナの能力ってのを詳しく知らないのだが、どんな能力なの?」

 ヒヅキの手から礼を言って恭しく木の実を受け取ったフォルトゥナは、その質問に顔を僅かに俯かせた。

「まぁ、言いたくなければいいけれど」

 そう言って木の実の中身を口に含むと、ヒヅキはフォルトゥナへ目を向けながら、口の中の実を噛み砕く。

「…………」

 強い苦味と共に奥の深い旨みが口の中に広がり、ヒヅキはしっかり目が覚める感覚と同時に、脳が一気に冴えていく感じを覚える。

 フォルトゥナは顔を少し俯かせて視線を手元の木の実に落としたまま、動かない。

 ヒヅキは背嚢の中から水瓶と予備の容器を取り出し、そこに水を注ぐ。

「水だけど飲む?」

 差し出された容器に目を向けたフォルトゥナはそれを受け取り、小さい声で礼を言う。

 フォルトゥナが容器を受け取ったのを確認したヒヅキは、背嚢からもう1つ容器を取り出し、そこに水を注いで一口飲む。

 それから水瓶を背嚢に仕舞ってから、木の実を食べては水を飲んでいきヒヅキが朝食を終えるも、フォルトゥナは木の実と水の入った容器を手にしたまま、動いていない。

 自分の分の容器を背嚢に仕舞ったヒヅキは、動かないフォルトゥナの様子を眺める。フォルトゥナにとっては自分を排斥する原因となった能力なだけに、おいそれと語れないのだろう。たとえそれがヒヅキであろうと。いや、ヒヅキだからこそ、かもしれないが。

「…………」

 それをある程度は察しているヒヅキは、フォルトゥナがどうするのか静かに見守る。幸いにして、時間に関してはたっぷりとあった。エインとの約束も、明確な期日を切った訳ではないし、数日や十数日ぐらいは誤差の範囲だろう。

 それから静寂な時が流れ、もうすぐ昼になろうかという頃になって、やっとフォルトゥナが顔を上げた。

「…………私の能力は…………」

 意を決したような表情で、フォルトゥナは静かに語る。

「対象の消去、です」

「対象の消去?」

「はい。対象を完全に消し去るのです。ただ、存在の消去ではないので、記憶や足跡まで消える訳ではありませんが」

「なるほど。それで、か」

 エルフは遺体を特定の木の下に埋める風習がある。それを大層大切にしているし、埋葬されない事を心底恐れてもいた。そんな中で、遺体どころか骨や髪さえ残さず消し去る能力を持った者が現れたどうなるか、それは容易に想像がつく。しかも相手は、力の制御が未熟と言われる子どもであったのだ。実際はいつ発覚したのかは不明ではあるも、その結果をヒヅキは知っていた。

「はい。私の力は生物以外にも効果を発揮します。その範囲は幅広く、どこまで有効かは私自身にも解りません。そして、この能力は強力で、防ぐのはおそらく不可能だと予想しています」

 怯えるような光を瞳に湛えて語るフォルトゥナに、ヒヅキはなるほどと頷きを返す。それだけ強力であれば、ウィンディーネがヒヅキ以上と評するのも頷けるというもの。

「でも、その力は制御できているのでしょう?」

「え!? あ、はい。完全ではありませんが、少なくとも無意識に発動するような事はありません」

「そう。なら、便利な能力じゃないか」

「え?」

「だって、対象を消せるのであれば、色々やれると思うんだが。まぁ、射程や発動条件などにもよるのだけれど…………それは神にも効果が在るのかな?」

「いえ、それは分かりませんが」

「そっか。その辺りはどうなの? ウィンディーネ」

 一瞬思案したヒヅキは、近くに漂うウィンディーネへと問い掛けた。

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