フォルトゥナ18
これからの身の振り方を考えるも、カーディニア王国に戻った後、次に行く当ても特にない。
(いや)
そこでひとつ思い当たり、それについて検証する。
(水晶の欠片を持ち主に返した方がいいか。それで色々と終わり……という訳にはいかないだろうが)
自分に付きまとっている神を思い出したヒヅキは、心の中で盛大に溜息を吐く。
(それでも、スキアを操っているという神をどうにかするには、水晶の欠片をどうにかして届けなければならない。他に当てもない訳だし)
正直、ヒヅキは世界についてはどうでもよかったが、ウィンディーネよりも格上だという神については、何かしらの対処をしたかった。
(しかし、何処に向かえばいいんだ? 何も手がかりがないからな)
ヒヅキが次の行き先について悩んでいると、リケサが夕食を食べ終える。
それを確認したヒヅキは、まだ元気がなさそうなリケサに料理の礼だけを告げる。それにリケサは弱弱しく言葉を返す。
「…………」
そんなリケサの姿を困ったように眺めた後、ヒヅキは自室に戻った。
自室に戻ると、ヒヅキは近くに気配を感じるウィンディーネに声を掛けた。
「ウィンディーネ」
「何かしら?」
ヒヅキの呼びかけに、ウィンディーネは姿を現して返答する。
「あの水晶の欠片の持ち主は今何処に居るのですか?」
「…………それを知ってどうするのかしら?」
「返すのですよ。私が持っていたところで意味のない物ですから」
「そう」
「それで、どちらに居られるので?」
「さぁ? 分からないわよ。私如きが居場所を特定出来る訳がないから」
「…………何処かに眠っているのでは?」
「どうだったかしら?」
お道化るように肩を竦めるウィンディーネの様子に、ヒヅキは少し思案すると、軽く首を傾げた。
「心臓が無くとも目覚めるのですか?」
「私達とは創造主が違うからね」
「なるほど。つまりは既に目覚めて何処かに居ると」
「…………」
「しかし、そこまでは掴んでいても、その後の消息までは本当に不明なのですね」
「…………私からは何も言えないわ」
「それで十分です」
ヒヅキの返答に、ウィンディーネは呆れたような顔を見せた。しかし細かく確認すれば、その表情は喜色に満ちているのが判る。
「では、何処で目覚めたので?」
「…………」
ウィンディーネは黙したまま、語ろうとはしないが、とても楽しそうな瞳をヒヅキへと向けている。
そんなウィンディーネにヒヅキは呆れながら、どうしたものかと思案するも、答えは出ない。
「目覚めたのはいつですか?」
「いつだったかしら?」
「私と行動を共にしている時ですか?」
「うーん、どうだったかしら?」
思案するような仕草を見せるも、ウィンディーネに答える気はないのは容易に理解出来た。それでも、それなりに長くウィンディーネと一緒に居るヒヅキには、それが明確な答えなのが解る。
「となると、遺跡探索の辺りですかね?」
ウィンディーネの反応を窺いながらそう口にすると同時に、ヒヅキは自分の記憶を探っていく。
「それは近くで目覚めたのですか?」
ヒヅキは問いを重ねながら、何処で目覚めたのかを考えていく。遺跡探索の時の話では、既に時間が経ち過ぎていて、対象が何処に行ったかなど分かるはずもないが、それでも捜索する起点ぐらいにはなるだろう。
それから幾つも質問を重ねながら、記憶を探って水晶の欠片の持ち主がいつ目覚めたのかを特定していく。
そうして記憶を探っていった結果、はじめて魔物を倒した遺跡の最初に棺のような物が在った時だと思い至る。あの時に空だった棺の中身が水晶の欠片の持ち主だったということだが、ウィンディーネはその際、そのような話をしていたなということもヒヅキは思い出していた。




