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フォルトゥナ16

 橋を目指して森の中を進むこと数十日。やっと森を抜けて橋の前に到着したヒヅキは、疲れたように伸びをする。

「やっとここまで到着か。道中静かではあったが、少し疲れたな」

 橋を前に僅かに思案したヒヅキは、周囲を見渡した後、橋の近くで少しは平らそうな場所を探して腰を下ろしてから、休憩を取る事にした。

「後は橋を渡って、町に戻るだけか。とりあえずリケサの宿屋で一泊してから、町を出るかな。氷の女王の家もその途中で寄ればいいだろうし」

 簡単に今後の予定を組み立てると、背嚢を頭の下に敷いて横になる。

 ヒヅキは横になって直ぐに眠りにつくも、ものの10分程で目を覚ました。

 目を覚ましたヒヅキは、周囲の状況を確認した後、上体を起こして背嚢から水瓶と容器を取り出して水を一杯飲むと、それらを仕舞ってから背嚢を背負い直し、立ち上がって再度周囲を確認した。

「何もないか」

 周囲に何も無いことを確認すると、昼下がりの時間帯に橋を進んでいく。

 橋は相変わらずところどころが汚れていて、前回ヒヅキが渡った時からあまり使われていないのが窺えた。

「管理できないとはいえ、しなくても大丈夫なのだろうか? それに、もしも氷の女王が首都からあの町に帰っていたとしたら、この橋を使ったのだろうか?」

 誰かが使った形跡はないが、一人が使ったぐらいでは、その痕跡を見つけるのは難しいだろう。

「まぁ、向こうの橋のように壊れていなければいいが」

 のんびりと歩きながら、ヒヅキは特に気にしていないように口にする。

 天気がいい中、河を撫でる水気を含んだ風を浴びながら、ヒヅキは橋の上をただ真っすぐに進んでいく。

 そのまま数日掛けて橋を渡ると、リケサが宿屋を営んでいる町が在る対岸に何事も無く昼には到着する。

 対岸に到着後、数分ほど休憩を挿んで森の中を進んでいく。

 何事も無く夕方には町に到着すると、ヒヅキはリケサの宿屋へと向かっていく。

「ん?」

 その道中、気配を探る範囲を拡げていたヒヅキは、一度覚えのある反応を捉える。

「この感じは…………それにこの反応が在る場所は、氷の女王の家が在る場所か。ということは、予想通りに帰ってきているのかな?」

 気配を捉えたヒヅキはどうしようかと思案するも、まずは、もうすぐ到着する宿屋でリケサへと首都の状態を報告。その後は一泊してから氷の女王の家へと向かう事にした。ヒヅキの予想が当たっていれば、一泊しても氷の女王は何処へも行かないだろうから。

 程なくして宿屋に到着する。優しげな光を灯す外灯に誘われながら中へと入ると、それに気づいたリケサが奥からやって来る。

 顔を見せたリケサは、ヒヅキの顔を見ると、笑みを浮かべた。

「いらっしゃい。今日はどうします?」

 その商人の顔に悪戯っ子のような表情を僅かに混ぜたリケサの笑みに、ヒヅキは内心で苦笑しながら、にこやかに言葉を返した。

「今日は頼まれていた報告と、一泊したいのですが」

「畏まりました。では、お部屋をお選びください。それとも前回と一緒がいいですか?」

 いつまでこうしているのだろうかと内心で疑問を抱きながらも、ヒヅキは前回同様の部屋を頼む。

 鍵を貰う時に、直ぐに夕食を作ること伝えられた後に、部屋へと移動した。

 部屋の中に入ると、明かりを点けて荷物入れに背嚢を仕舞い、椅子に腰掛け一息吐く。

「流石に少し疲れたから、夕食を食べたらさっさと寝るかな」

 採光用の窓へと目を向けたヒヅキは、小さく呟くと、ふと思い出して立ち上がる。

 そのまま荷物入れに近づくと、中に仕舞ったばかりの背嚢の中から本を数冊取り出し、それらを確認していく。

「まともに読める本の中に読みたいものは無かったが、何かしら役に立つのだろうか?」

 掠れている本の表題を確認した後、ヒヅキは軽く本を持ち上げ、様々な角度から本を観察する。ボロボロで傷だらけではあるが、中身は欠けていない。

「まぁいいか」

 軽く中身を確認しながら一通り本を確認したヒヅキは、リケサが近づいてきたのを察知して、本を背嚢の中に仕舞った。

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