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フォルトゥナ7

 しかし、直ぐに気を取り直したヒヅキは、周囲を窺いながら最下層の探索を続行する。

「あっちもこっちも瓦礫、瓦礫、瓦礫と。図書館どころか、民家以外が見当たらないな。いや、商店らしき残骸は見つけたが、だからどうしたというものでもないのだからな。肝心の図書館までの道のりは不明だが、何か目印になる物はないのだろうか?」

 ヒヅキはきょろきょろと周囲を窺うも、そこには瓦礫と建造物址が続くばかり。本棚の1つも見当たらない。

 もしも図書館の場所が上層だと、スキアが徘徊している以上、益々厄介になるか。それに手遅れかもしれないが、急がなければスキアに色々と蹂躙されてしまう。

「…………こちらに在る可能性に賭けるか。本を調べられないのであれば、それならそれで構わないし」

 周囲を見渡しながら首都内を駆け回り、時折襲撃してくるスキアを倒していく。そうして1日が経っても、未だに図書館らしき場所は見つけられない。

「勉強教えているという場所らしき址は見つけたが……」

 少し前に拾った比較的まともな本に目を向け、その中身に軽く目を通した感想を呟く。そこには読み書きを教える初歩的な内容が書かれていた。

「しかし、本当に勉強なんて教えていたんだな」

 ガーデンにも似た施設はあったものの、それでもかなり小規模で、教えていても手元に在る本と同等かそれ以下の内容でしかない。

「流石は選民、とでも言えばいいのか?」

 ヒヅキは呆れたようにそう呟くと、内容の確認を終えた手元の本を適当に放り投げる。既にエルフ語の読み書きが出来るヒヅキには、魅力の無い内容の本であった。

「まだまだ在るな、最下層だけでも広いものだ」

 未だ半分に届かない範囲しか探索できていない事に、ヒヅキは疲れたように呟く。それでいてこれがまだ幾層もある内の1層なのだから、気が遠くなるというやつだ。密かにウィンディーネが知っていないだろうかと期待して声に出しているのだが、それに対する反応は無く、いつの間にやら姿も消している。

「スキアの様子はっと…………」

 気配を探ると、もうエルフの反応は近くには無かった。最上層までは遠いので探っていないが、それでも結構上の方まで探ってスキアの反応しかないのだから、首都に残っていたエルフは全滅したのだろう。最初の襲撃したての頃ならまだしも、ここまできて運よく逃げきれたとは到底思えない。

 なので、ヒヅキは小さく嘆息する。エルフが死滅してもスキアがまだ上層に居るのは、文明を破壊しているのだろう。そして、それが終われば次は間違いなくヒヅキが標的となるのだろう。現に最下層に居たスキアはヒヅキに標的を定めたようで、次々と襲ってきている。無論、危なげもなく返り討ちにしているが。

「…………本当に図書館は何処に在るのか」

 もしかしたら、本当は首都には図書館が無いのではないか、という考えがヒヅキの脳裏に浮かぶも、それは多分ないだろうと、冷静な部分が否定する。リケサが図書館は首都に在ると言っていた以上、教育に熱心なエルフ達が図書館を潰すとは思えない。

 ではどこに在るかだが、それはまた別の話であった。少なくとも、教育を施していたであろう場所やその近くには見当たらなかった。

 スキアの相手をしつつ、更に2日首都を探し回ったヒヅキは、遂に最下層を探し終えたが、結局図書館らしき場所は見つからない。

「収穫は本12冊、か。しかし、完全に残っているのは内2冊とは、いやはや」

 内容も求めたモノではなく、多少専門的な語学書や創作された物語、ちょっとした辞書などで、中には読むのは憚れたが、誰かの日記もあった。

 ヒヅキは上層へ移動する前に、一応仕舞っていたそれらの本を背嚢から取り出し、その内の半数以上を不要だからとその場に置いていく。

 そうして背嚢の中を整理した後、ヒヅキは周囲の安全を確かめてから少し休憩して、上層を目指すのだった。

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