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フォルトゥナ3

 世界が亡ぶ未来しか思い浮かばない事に、ヒヅキは小さく諦めにも似た息を吐きf出す。

 しかし、直ぐに自分には関係ないかと思い直すと、先程の考えを頭から追い出した。

 ヒヅキは自分の命に価値を見出してはいない。……中の者達は別なようだが。それに、多少守ろうかと思うものも存在してはいるが、それは手が届く範囲の話でしかない。

「…………ん?」

 そこで何かに気づいたヒヅキは、鼻を鳴らして周囲を窺う。

「これは何のにおいだ?」

 雨上がりの森のにおいに混じって、鼻に衝く生臭さが漂っていた。

「何処かで何かが死んでいるのか?」

 おそらく獣の類いであろうが、もしかしたら違うかもしれない。

「それも死んで間もない感じか?」

 腐臭とはまた違った強い臭いに、ヒヅキはそう判断する。それに、少し前まで雨が降っていたというのにその臭いはしっかりと鼻に届いている。

 少し悩んだヒヅキは、臭いの元はそこまで離れていないと判断して、念の為に様子を見に臭いを辿っていく。

「まぁ鹿とか熊なんかだとは思うが」

 そう思いながら臭いを追って進んだ先に在ったのは、食い荒らされたエルフ達の残骸であった。それを見て誰に、など問う必要もない。

「これは、また何時ぞやのような冒険者と兵士、なのか?」

 血生臭さの漂う空間に手足が一部残っているだけなので何とも言えない。それは鍛えられた手足に見えなくもないが、どれぐらいから戦闘に従事しているエルフの手足かは判断に迷った。普通に生活しているだけでもそれなりに鍛えられるというのも在るが、流石に指が数本くっ付いているだけの手の一部や肩の部分、踵だけの足や膝の辺りだけでそれを判断するというのは、ヒヅキには困難であった。

「他には…………」

 ヒヅキは耳をそばだて、鼻を動かしながら注意深く周囲を窺う。すると、少し離れた場所に手足のようなものを見つけた気がして、そちらへ移動する。

「こちらは、何者かの襲撃を受けた後、ということかな?」

 そこには木に寄りかかるようにして死んでいる、鎧姿のエルフの姿があった。

「ふむ。これは向こうの仲間、でいいんだろうか?」

 一人離れた場所で死んでいるそのエルフは、頑丈そうな鎧の胸元辺りに大きな貫通している穴が開いていた。それは、エルフが寄りかかっている木にも確認出来る。

「何かに心臓を刺し貫かれたと」

 その状況からそう推察するが、これはどう見ても何者かの殺しの後であった。断じて向こうにあるスキアが食い散らかした光景とは異なっていた。

「頑丈そうな魔法鎧だし、結構この木も硬かったと思うが…………」

 エルフの姿態を確認したヒヅキは、木の穴を確かめる為に、寄りかかっているエルフを横から押してどかす。

「こちらの傷は浅い…………こともないか」

 光球を現出させたヒヅキは、それを近づけ木の様子を確かめていく。

 木の方の穴は、半ばまで突き刺さっていたようだが、その刺さっていたモノが何かまでは判らない。ただ、とても鋭利なものであったのだけは痕跡から判った。

「さて、何があったのやら」

 しばらくエルフと木に視線を行き来させたヒヅキは、諦めて首都の方へと足を向ける。

「とりあえず、あれは仲間割れ? ということかな。そして、その前後にスキアが現れたのか、もしくはあの2つは全く別物だったのか」

 頭なの中で整理しながら呟くも、ヒヅキは結局分からないと肩を竦めて思考を切り替えた。

「とにかく、今は首都の方の様子を見にいかないとな。リケサにも教えないといけないし」

 未だ漂う臭気を嫌ってか、ヒヅキは多少足早に進んでいき、完全に臭いがしなくなった辺りでいつもの速度に戻す。

 そうして進んだところで枝葉の密度が少し減った天井を見つけ、念の為にもう一度首都の方角を確認してから、間違いがないのを確かめて進んでいく。首都に到着するにはまだまだ距離があった。

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