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魔法道具81

 ヒヅキは鍛冶屋の外に出ると、もう日課になりつつあった氷の女王の家へと足を向ける。

 道中おかしな事もなく無事に進み、目的地に到着した。

 目的地に到着した後、いつもの木の場所で背嚢を降ろして背を預けると、そのまま木の表面に背中を滑らすようにして腰を下ろす。

「今日も少し作業をするか」

 背嚢を開けて中から人形を取り出すと、右手で持ちながらそこへと生命力を注いでいく。ただし、前回の事を教訓に、注ぐ生命力の量はかなり少量にしてはいるが。

「この人形が完成する方が早いんだろうな……」

 氷の女王の家へと視線を送った後に、手元の人形へと視線を落とす。ウィンディーネの話通りであれば、人形完成まであと数日は掛かるだろうが、それでも氷の女王が首都から帰宅するのはまだまだ先の話だろう。

「首都の防衛ねぇ。頻繁に襲撃してくるスキア相手にあの巨大な首都を守護し続けるというのは、おそらく私でも無理ですよね?」

「そうね。ヒヅキの場合は魔力消費量が多いから、長期戦には向いていないもの。そういう長期間の継続的な守護はヒヅキには不向きね」

 独り言のようなヒヅキの問いに、ウィンディーネは何処かに姿を消しながら答える。

「ということは、氷の女王は魔力消費量の少ない魔法を使うのですか?」

「言ったでしょう? 氷の魔法を基本的に使っていると。ヒヅキのそれに比べれば、ほとんど魔力消費無しで使っているようなものよ」

「そうなんですか?」

 光の魔法以外では身体強化ぐらいしか使えないヒヅキは、他の魔法についてはあまり詳しくなかった。特に魔力消費量など分かりようがない。

「ええ。何度もいうけれど、その魔法の消費量は、本来人間では扱えないほどに膨大なのよ」

「凄いのは分かるのですが、私ではそれがいまいち実感できていないのですよね」

「まぁ、ヒヅキはそれ以外には使えないものね。正直、他の系統の魔法が使えたのであれば、今ある方はほぼ使わなかったでしょうね」

「私にとってはその方がよかったですが」

 人形を持つ右手に視線を向けながら、ヒヅキは儚げな笑みを浮かべる。

「まぁそうね」

 そんなヒヅキへと、ウィンディーネは軽く同意する。

「……さて、そろそろ人形は仕舞いますか」

 程々のところで生命力を注ぐのを切り上げたヒヅキは、人形を背嚢の中に仕舞って閉じると、立ち上がり背嚢を背負う。

「もうじき夕方になりそうですね」

 空を見上げたヒヅキはそう呟くと、氷の女王の家に背を向けて歩き出す。

 それから町の中を進んでいき、日が暮れる前には宿屋に到着した。

 自室の荷物入れに背嚢を仕舞って、リケサが呼びに来るまで待つ。程なくして呼びに来たリケサに返事をすると、食堂に移動する。

 食堂でリケサと挨拶を交わして席に着くと、食前の祈りを捧げて夕食を食べ始める。

「義手どうしたの? やっぱり不具合だった?」

 夕食を食べ始めてすぐ、リケサが心配そうに声を掛けてきたので、ヒヅキは鍛冶屋での一件を簡単に説明していく。

「そうなんだ! ヒヅキは凄いんだなぁ」

 リケサは頷きながら感心したようにそう口にすると、繁々とヒヅキを観察する。

 その視線に、ヒヅキが居心地悪そうに僅かに身体を捩ると、それに気づいたリケサは謝りながら視線を外す。

「ごめんごめん。しかし、そんなことエルフでも中々言われないよ」

 呆れと驚きの混ざった声に、ヒヅキは苦笑めいた笑みを浮かべる。

「似たような事を言われましたが、ただ単に魔力の細かい操作がエルフ方々に比べて不得手なだけですよ」

「んー……そんなものかな?」

「はい」

 納得いかない表情のリケサだったが、ヒヅキは気にせずしっかりと頷いてみせた。そんなヒヅキの様子に、リケサは納得いかない表情ながらも、納得したように頷く。

「それでも、魔法道具が扱えるだけでも十分凄いよ」

 とりあえずそう付け加えたリケサは、小さく肩を竦めたような仕草を見せた。

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