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魔法道具69

「その魔法は、時代や語る者によって呼び名は変わるが、総じて称えられる魔法であったな」

「英雄の魔法、ですか?」

 手元の光の剣を消しながら、ヒヅキがどこかで聞いたその呼び名を口にすると、グノムは身体を揺らしてそれを肯定する。

「そういう名もあったな」

「そうですか……」

 苦々しそうにそう口にしたヒヅキは、直ぐに再度光の魔法について尋ねた。

「それで、これはどういった魔法で、何故英雄の魔法などと呼ばれているのでしょうか?」

「知っての通り光の魔法だ。しかしその実、光と限った魔法ではない」

「どういう意味でしょうか?」

 はじめて聞くその説明に、ヒヅキは少し前のめりなって問い掛ける。

「光の剣や光球。そんなものはそれの一端でしかないが、どちらも光っているからそう思うだけだ。今までの民衆とて、その光が印象的で、それを光の魔法だと呼んだ。しかし、それは英雄の魔法だ。英雄とは、困難を打破した者が称えられる名。そのような者が、光しか使えないような魔法を扱っていた訳なかろう?」

「そう、なんですか?」

 ヒヅキは今までの旅の歩みを思い出し、割と光の剣と魔砲だけでなんとかなっていた気がして、グノムの言に首を捻った。

「その魔法はもっと懐が深いのだよ」

「はぁ」

 どういう意味かと首を傾げたヒヅキに、グノムは話を続ける。

「その光の魔法だが、実際は万象の理と呼ばれる魔法で、それを解すこと叶えば、あらゆる魔法に精通するのだよ」

「万象の理……そんな大層な名前の魔法だったんですね」

 グノムの説明に、ヒヅキは己の右手に目を落として、複雑そうな表情を浮かべる。それは特に負の感情が強い表情であった。

「まぁ、それは元々人間の魔法ではなく、か――」

「そこら辺でもういいのではないかしら」

「ん?」

 ウィンディーネの横やりに、グノムは不機嫌そうな声を出した。

「そこまで告げる必要もないと思うけれど?」

「何故だ? それは今、彼の者の手に在る。ならば、持つ者として知る権利はあろう? それに、報酬として情報を提供するとも言ったからな」

 グノムの言葉を聞いたウィンディーネは、呆れたように鼻で息を吐く。

「……なるほど。それでこの無駄な茶番を仕掛けたと?」

「何を言っている?」

「やはり食えませんね」

「……むしろ、そこまでして隠す君の方が理解出来ないがね」

 またもや一色触発の様な雰囲気になる二人だが、ヒヅキの心情的にはグノムの方を応援したかった。しかし、明確にどちらかに加担するには、ヒヅキはあまりに矮小で、部外者だった。

 ヒヅキはまだ説明を聞いている途中なのだがと、困ったように両者に目を配る。しかし、そのまま待っていても話は進まないと思い、グノムに先を促す為に声を掛ける。ウィンディーネは一先ず無視する事にした。

「それで、元々はどなたの魔法だったのですか?」

 その質問に、ウィンディーネが顔を向けたのを視界の端で捉えたものの、ヒヅキはそれを努めて無視する。

「ああ、元々は神の魔法だったと言われている」

「だった、のですか?」

「今の神はまた違う魔法を使っているからな」

「今の神、ですか?」

「ああ。元々一柱の神が世界を創り、その後三柱の神に世界を託し、そして今の一柱の神が世界を奪ったという話だ」

「なるほど。その前の神々はどうされたので?」

「始原の神の行方は知らぬが、その後に世界を託された三柱は、今の神に殺されたと聞いている」

「そう、なんですね」

「噂の様なモノよ」

 重々しく頷いたヒヅキへと、横からつまらなそうにウィンディーネが付け加える。

「噂ですか?」

「ええ。だって、その当時に私達は存在していなかったもの。遺憾ながら、私達は今の神によって創られた存在だから。まぁ、それはヒヅキ達も同じだけれど」

「なるほど」

 どこか投げ遣り気味にそう言うと、ウィンディーネはため息を吐いた。

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