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魔法道具67

「おぉ! やっと帰ってきたか!」

 ヒヅキが食堂に入ると、席に着いていたリケサが、顔を上げて心配したように声を上げる。

 そんなリケサの様子に、ヒヅキは申し訳なさそうに頭を下げた。

「帰りが遅くなってしまい、申し訳ありません」

 ヒヅキが謝ると、リケサは手を振ってそれに応える。

「それは大丈夫だよ。でも、珍しいね。ヒヅキがこんなに帰りが遅いの。というか、はじめてかな?」

 リケサの言葉に、ヒヅキは記憶を探っていく。そうすると、確かに普段は日暮れ頃までには帰るようにしていたなと思い出す。

「今日は少し町を離れていまして」

「そうだったの。どこに行ってたの?」

「森の散策です」

「そっか。まぁ、無事で良かったよ」

 安堵の笑みを浮かべると、リケサはヒヅキに背を向ける。

「もう夜食かもしれないけれど、夕食を持ってくるよ。食べるでしょ?」

「はい。お願いします。私は一度背嚢を部屋に戻してきますね」

「分かったよ。その間に準備しておく」

 リケサは手を上げると、食堂の奥に消えていった。

 それを見送ったヒヅキは食堂を出て自室に戻り、背嚢を荷物入れの中に仕舞う。

「明日から2日間スキア退治か。つくづくスキアと縁があるものだ」

 グノムの依頼に思わず苦笑を漏らしながら、ヒヅキは自室を出て食堂へと移動する。

 食堂に入ると、夕食の載った盆が机に並べられ、リケサが既に席に着いていた。

 軽く言葉を交わして食前の祈りを捧げると、夕食を食べ始める。食事も少し進んだところで、ヒヅキは明日からの予定を伝えるために口を開いた。

「明日と明後日は帰って来ないかもしれませんので、食事は要りません」

「明日の朝食は?」

「ああ、それはお願いします。帰ってくるのは3日後の夕方頃になると思いますので」

「分かった。明日の夕食から3日後の朝食まで用意しなくていいのね。それで、その間何するの?」

「森の散策をしようかと」

 ヒヅキの答えに、リケサは納得が言ったように頷いた。

「森は広いからね。でも、スキアには気をつけてね」

「はい。それは勿論」

「ならいいけど……まぁ、用心して何とかなる相手でもないかもしれないけれど」

 肩を竦めたリケサに、ヒヅキも似たような思いの笑みを返す。

「でもまぁ、気を配るに越した事はないか」

「そうですね。何が在るか分かりませんからね」

「とにかく、2日間居ないというのは分かったよ」

「はい。そういうことでよろしくお願いします」

「うん。事前に言ってくれて助かるよ」

 そのリケサの応えに、ヒヅキは今回のことへの注意かとも思ったが、目を向けたリケサにはそんな様子は見られなかったので、単なる感想のようであった。

 その後も軽く雑談を交わしながら夕食を食べていき、夕食を食べ終えるといつものように料理への感想と礼をリケサに述べてから、ヒヅキは自室に戻っていく。

 自室に到着すると、ベッドに横になって明日の予定を頭に思い浮かべる。2日でどれぐらい倒せるかを考えながら。

「2日だから、気配察知しながら範囲内を見回っていくとなると……結構な重労働になりそうだな」

 それに小さく息を吐くと、ヒヅキはさっさと眠ることにする。未だに睡眠をほとんど取らずとも問題ない身体だが、それでも寝られる時には寝ておきたかった。安全に寝られることなどそうないのだから。

 そして翌朝。

 目を覚ましたヒヅキは、呼びに来たリケサと共に食堂で朝食を食べると、その後は部屋で背嚢を回収して宿屋を出た。

 まずは町を出るところから始め、気配察知を行いながら移動していく。それで見つけたスキアを殲滅しながら、次に指定された範囲の外周部分を巡っていく。

 巨大な河から巡っていき、丘の部分に移動していく。そのまま町を目指して一周の時間を計ると、今度はその範囲の中央へと向かう。その間もスキアを見つけてはそちらに赴き殲滅を行う。

「やはりこの辺りは少ないのか」

 しかし、見つけられるスキアの数はそこまで多くはないので、ほとんどが首都周辺に移動しているのだろう。それなのにグノムがスキア討伐を依頼してきたことにヒヅキは内心で首を捻りつつも、淡々と依頼を遂行していく。

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