変化
ソレイユラルムのギルドハウスを後にしたヒヅキは、途中でギルドハウスに連れていかれたために中断していたソヴァルシオンの探索を再開する。
とりあえず連れていかれる前に居た店の場所まで戻ってきたヒヅキだったが、どうしても続きから探索する気分にはなれず、そのまま横道に入ることにした。
「こっちは大通り以外も広いなー」
チーカイでは横道は狭く、ちょっとした迷路のように曲がりくねっていたが、さすがは大都市と言うべきか、横道ですらチーカイの大通りより広かった。
ヒヅキは赤銅色した頑丈そうなレンガ造りの建物を眺めながらも、鋭敏に街の雰囲気の微妙な変化に気がつく。
「ギルドハウスに居る間に何があったのやら………」
どこかピリピリというよりそわそわというべきか、落ち着かない感じの雰囲気が漂う街に、ヒヅキは残念そうにため息を吐いた。
「こういうのを興が醒めるって言うのだろうか?」
その雰囲気に当てられたという訳ではないが、機嫌が急降下したヒヅキは街の探索を切り上げて宿屋に借りている部屋へと戻ることにする。
「まだまだこの街には見たい場所、見てない場所は山ほどあるけど、そろそろ一度出るべきかな……全部回ろうとしたら数年は掛かりそうだし、切り上げるにはいい切っ掛けだったのかも。肝心の本来の目的は既に達している訳だし」
宿屋への帰り道、ヒヅキはぼんやりと遠くの景色を眺めながらそんなことを頭に浮かべる。
せっかく旅に出たのだ、ここ数日でヒヅキは幾度も実感したことだが、世界はまだまだ広いのだ。そのため、大都市とはいえただ1つの街に留まり続けるのは、段々と勿体ないような気がしてきたのだ。
「そうと決まれば、まずは旅支度をしないとな」
ヒヅキは宿屋に帰る前に食料などを買いに店に寄り道していくことを決めたのだった。