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魔法道具56

 スキアがエルフ達を蹂躙した場所は血だらけで、下草が赤黒く染まっている。当然ながら周囲には戦闘らしい跡もなく、少しエルフ達に踏まれた草が目に入るだけであった。

(……スキアというのは軽いのだろうか?)

 あれだけの速度で移動していたというのに、その場にスキアの足跡がほぼ見当たらない。スキアが立っていた部分の草が踏まれて僅かに倒れているが、それだけだ。

 スキアが現れた木々の奥も見遣るが、特に何かある訳でもない。木が倒れているとか、枝が折られているという部分は確認出来ない。

 ヒヅキは先程目にしたスキアの姿を思い浮かべ、そこそこな大きさであったのに、どうやって移動しているのか不思議に思う。

(まるで幽霊だな)

 その実体がほとんどないかのような跡に、ヒヅキはそんな考えが浮かび、それもそうかと小さく笑う。スキアとは今までの時代の住民達だという話なのだから、幽霊と同義だろう。

(身に付けていた魔法装備のひとつぐらい落ちていればよかったんだが)

 周囲には他に気になるものもなかったので、ヒヅキは視線を切ると踵を返して町中を歩いていく。

(……あまり変わらないか)

 記憶の中で宿を取っている河の向こう側に在る町と比べたヒヅキは、木の洞や枝の上に家が在るというその似たような構造に、一気に興味を失う。違いと言えば、申し訳程度の道が在るかどうかだろう。こちらは長年歩いたことで草が生えていない部分が、一応の道の役割になっているようだが、木の根がうねった地面の上では、それも分かりづらい。

 首都の方角を確かめる為に空を見上げると、翳っている部分を確かめてから、そちらの方角へ足を向ける。

 初めて歩く森の中ではあったが、屋根の様に覆う枝葉に影を落としている方角に向かえばいいだけなので、なんとか迷わずに済んでいた。

 それからも森を進んでは、町を見つけて探索をしてみたり、途中に流れていた河を眺めたりしたものの、あれから新しいエルフは見掛けなかった。それは奴隷達も同様で、森の中を闊歩しているはずのスキアにさえ遭遇しない。

 エルフや他の種族に関してはまだ解るが、何故こうもスキアに遭遇しないのかとヒヅキは疑問に思うも、その答えは見つからない。

 しかし、平穏に移動できるのであればそれに越した事はないので深くは考えずに、そんな事もあるのかと納得する事にした。

 そうして森の中を移動して20日ほどが経過した。

 途中で破棄された町などに寄り道をしたが、大分首都が大きく見えるようになってきていた。そこまでくれば、スキアの反応がかなり増えていく。

(この辺りで満足するべきかな)

 首都には近づかないようにと、リケサに散々忠告されていたので、ヒヅキは離れたところからこちらを見下ろす大樹を見上げて、満足して踵を返して来た道を戻っていく。

(それにしても、かなりの数のスキアだったな)

 ガーデンの時ほどではないにせよ、幾匹かの集まりで行動している数百のスキアに囲まれているというのは、かなり絶望的な状況なのではないだろうか。そう思うも、ヒヅキに出来る事はない。スキアの相手はガーデンでもう十分に行った。

 踵を返したヒヅキは、来た道を戻っていく。

 相変わらず道中でスキアに遭遇する事はなく、とても平穏な森の中を移動していき、途中で寄り道もあまりしないで進んだことで、行きよりも数日早く最初の河の前まで戻ってこれた。

「今回は反対方向の橋でも探すか」

 来た時とは異なり、河の流れに沿って下流の方へと道を進み、対岸に渡る為の橋を探していく。

 ゆったりとした河の流れを横目に進むこと2日。離れたところに目的の橋を見つけたヒヅキは、その橋を観察する。行きで渡った橋は終端部分が無くなっていたが、こちらは問題なさそうであった。橋自体もそこそこ綺麗なので、対岸まで問題なく繋がっている事だろう。

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