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魔法道具55

 森の奥へと進んでいくと、少しだけ木々の間隔が狭くなる。とはいえ、もとから枝葉が天井の様に覆っていたので、多少暗くなったぐらいでそこまで明るさに変化は無い。

 足下には木片や服などが散乱しているので、やはりここは元々町だったのだろう。

 散乱している物や木の根に気をつけながら進むと、少し離れた場所に先程のエルフ達の姿を認めて、ヒヅキは足を止める。

 木々の合間から様子を見てみると、エルフ達は町の中を漁っているようであった。

(……ん? 何かを探しているのか?)

 しかし、よくよく観察してみると、それは漁っているというよりも何かを探しているようにも見えた。

(ふむ。ここに何か在るのか? それとも生存者が居ないか捜索に来たのだろうか?)

 そうは思ったが、先程の男性の事を思い出し、違うだろうかと首を捻る。

(いや。彼らにとっては、人間もそこらの有象無象と変わらない取るに足らない存在なのか)

 もしも彼らが住民の保護もしくは救助としてやって来たのだとしても、エルフにとっての住民とは、同族のエルフだけなのだろう。他は生きていても玩具でしかない。

(ということは、この町は最近スキアに襲われたのか? それに、こうやって兵士達を派遣するだけの余裕が首都にはあるということだろうか?)

 リケサに聞いていた話よりも、首都の現状は幾分か状況がいいようだと思いながら、ヒヅキはエルフ達の動向の観察を続ける。

 エルフ達は足下に散乱している物をどかしたり、木の洞を覗き込み、枝の上へと目を向けていくも、生き残りは見つからないし、その気配すらない。

 しばらく進んでいくと、開けた場所に出る。

 そこは周囲の木が幾本も倒れ、上部から射し込む陽の光を遮る枝葉が無い為に、とても明るい。

 周囲には生活用品以外にも、太い枝や大量の葉が積もっていて、地面を覆い隠している。

 エルフ達はその山をどかしながら、生存者が居ないか探していく。

(ただの救助隊、ということでいいのかな?)

 その行動に、ヒヅキはそう結論付けてその場を離れようかと考えたところで、気配察知に覚えのある気配を捉える。

(……スキアか)

 ヒヅキがスキアの気配を捉えた方面に顔を向けると、かなり離れていたはずのスキアが一瞬で距離を詰めてエルフ達の前に現れる。数は二体。

「ひッ!!」

 突然姿を現したスキアに、おそらく生存者を探索中であったエルフ達は、悲鳴を上げて身を固くする。そんな中でも、すぐさま動く者も居た。

(あれがエルフの冒険者、でいいのかな?)

 十数人居るエルフの内の三人と数は少ないが、それでもエルフの冒険者は、突然の闖入者にも即応して武器と盾を構える。

「クソ! 二体だと!? これじゃあ戦力が足りない!!」

 冒険者の一人が悪態をつくと、兵士達も急いで武器を構えた。流石に逃げられないので、逃げるという選択は無いのだろう。

 そんなエルフ達を待っていたかのように、戦闘態勢を整えたエルフ達へとスキアが二体襲い掛かる。

(……………………ふむ)

 決着は一瞬であった。

 襲い掛かったスキアの攻撃にまともに反応出来たのは冒険者達だけで、兵士達は知覚は出来たようだが、それに身体がついていかなかったようだ。

 スキアが腕で薙ぎ払うと、それだけで兵士を全て失う。魔法装備で身を固めておきながら、その冗談みたいな光景に、冒険者達は口元を歪ませる。

 それでスキア二体と冒険者三人だけが残る。数だけで見れば二対三ではあるが、冒険者三人では精々スキア一体が限界だろう。

 それを証明するかのように、スキア二体がすぐさま冒険者三人に襲い掛かると、いっそ清々しいまでにあっさりと物言わぬ姿に変えられてしまった。

 スキア達は狩り取った獲物にその場で噛みつくと、それを食していく。

 次々と口に放り込み、ろくに咀嚼もしないで飲み込むと、十数人居たエルフ達は数分ほどで綺麗に処理された。

 その光景を見ていたヒヅキは、スキアもお腹が空くのだろうか? と疑問に思うも、ヒヅキが疑問を抱いる内にスキアはどこかへ移動してしまった。

 一瞬で静かになったその空間に、ヒヅキは気配を隠したまま足を踏む出す。

 新鮮な生臭いにおいがその開けた空間に漂っているも、特に気にするでもなくヒヅキはスキアがエルフ達を蹂躙した場所へと近づいていく。

 そんなヒヅキへ少し強い風が吹いてくる。

 枝葉の天井が無い為に、この場所では風が吹き込むようになっているらしい。それでもまだ弱いものではあったが、空間に満ちていた生臭さを押し流すのには十分なようで、先程よりも匂いが薄くなっていた。

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