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魔法道具53

 元奴隷六人と別れたヒヅキは、森の中を進んでいく。

(えっと、首都の方角はあっちだったかな?)

 途中で獣人達の奴隷仲間の許へ移動する為に進路を変えて森を進んだことで、首都の在る方角が少し曖昧になっていた。

(木に登って方角を確認するか)

 判らなければ調べればいいと、ヒヅキは手近な木の上へとするする登っていく。

「えっと……」

 木の天辺付近まで登ると、ヒヅキは周囲を見渡す。すると、直ぐにそれが視界を埋める。

「はぁー……これは本当に木、なのか?」

 天へと突き抜けているのではないかと思えるほどに高く聳えるその大樹は、まだ距離があるとはいえ、最初の頃よりは近づいたことでその威容をこれでもかと見せつけてくる。

 そのヒヅキの視界の先には、木というよりも壁があった。

 天を突き破らんばかりに聳立するその大木の天辺は、どれだけ仰ぎみようとも、その先端を捉えることは叶わない。

 横は切り立った崖の様に広がり、どこまで目を向けても、その終わりが見えてこない。その様はまるで、ここが世界の果てであることを告げている様にさえ思えた。

「近くで見ると全然違うな」

 霞むほどに遠くからでは、ヒヅキは凄く大きな木程度の認識しか持ち合わせていないかったが、近くで見たその大樹はあまりにも大きく、木である事を一瞬失念してしまったほどだ。

「とりあえず、方角は分かった」

 首都の方角を記憶したヒヅキは、そのまま木を降りる。そうすると、あれだけ大きかった首都の大樹も、木々に隠れて見えなくなってしまう。

「見上げれば一応確認出来るな」

 枝葉が広がり、緑の屋根を築いている上空は、明るさぐらいは確認出来るが、空がはっきりと見える訳ではない。それでも、日を遮り大きな影を落とす大樹の姿が確認出来た。

「これが大樹の仕業だとは思わなかった」

 上空の影から視線を前に戻したヒヅキは、首都を目指して進んでいく。

(スキア以外の気配があるな。これは首都を護っている兵士や冒険者かな?)

 しばらく森の中を進んでいたヒヅキは、少し離れた場所にスキア以外の生き物の反応を複数捉えて、そう推測する。

(このまま近づくのはまずいかな? 見つからないようにしないと)

 周囲に気を配りながら、慎重に森の中を進んでいく。木々が邪魔で先があまり見通せないが、それは向こうも同じこと。しかし、エルフは森の住民である以上、油断はできない。

 風が頭上の葉を揺らすも、木に囲まれた森の中まではあまり吹き込んでこないようで、そこまで風を感じない。それは風上や風下をあまり考えなくてよくて楽ではあるが、近づくのが難しくもあった。

(しかし、何故ここに何者かの気配が? 首都はまだ離れた場所だというのに)

 疑問に思いながらも、気配を探りながらそっと移動し、相手が確認出来る距離まで近づいていく。

 そうして気配を消しながら慎重に近づくと、とうとう相手が確認できる距離まで近づくことが出来た。

(相手は……やはりエルフか。しかし、他にも誰か?)

 視線の先では、見事な装備に身を包んだエルフが十名ほど、何かを探すように顔を周囲に向けながら移動していた。その辺りは倒木も多くあるようで、大きく立派な木が地面に横たわっているのが見える。

(ここは町だったのか?)

 その倒木の枝の辺りに家らしき残骸が目に入り、ヒヅキはそう推測する。であれば、ここは破棄された町のひとつなのだろう。

 ヒヅキがそう推測していると、町だった場所の奥から数人の反応が近づいてくるのを捉える。

 しばらくして姿を現したその反応の相手は、同じくエルフであったが、その手には大きなぼろ布の塊のような何かを掴んでいた。

(あれは……生存者?)

 そのぼろ布には生者の反応があった為にヒヅキが内心で首を捻ると、元々いたエルフと何事か交わした奥からやってきたエルフは、その手に持つぼろ布を足下へと放り投げた。

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