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依頼

 ソレイユラルムのギルドハウスに入ってきた女性は足早にユルドの下まで近づくと、

「ギルマス、今少しいいですか?」

 チラリとヒヅキに視線を向けた女性の問い掛けに、ユルドは少し考える仕草を見せる。

「ここではダメな話ですか?」

「いえ、特に聞かれて困るような話ではありませんが………」

 そこで口ごもった女性の間を埋めるかのように、ヒヅキはユルドに話し掛ける。

 女性の言動は客人に対して失礼な態度かも知れないが、たとえ機密性の低い話題だったとしても、見知らぬ人物を警戒するのは当たり前だろうとヒヅキは納得していた。

「私への用件は先ほどので終わりでしたら、私はそろそろおいとましてもよろしいでしょうか?」

 それにユルドは女性を横目に見る。

「そうですね、ヒヅキ君への用件は先ほどので済みましたが、時間がおありでしたらもう少しお待ち頂けませんか?」

「せっかくですが申し訳ありません」

 ヒヅキはユルドの申し出を断ると、話の終わりの合図として一礼してからギルドハウスの外に出る。これ以上面倒事に関わるのは正直ごめん被りたかったのだ。



 ヒヅキが出ていった扉を見ながら、ユルドは残念そうに息を吐く。勘と呼ばれるような漠然としたものだが、なんとなくこの話は彼にも聞いておいて欲しかったのだ。

 しかし去ってしまったものはしょうがないと、ユルドは諦めて視線を女性に向ける。

 ユルドの視線が自分に向いたのを確認した女性は、軽く一礼してから口を開いた。

「緊急の依頼が来ております」

「緊急?それは名指しの依頼ですか?」

 ユルドは僅かに眉根を寄せる。緊急の依頼などそうそうあるものではない、どんな厄介事かと軽く身構えて次の言葉を待った。

「いえ、ウチに直接の名指しで来た訳ではなく、全ての冒険者への緊急依頼のようです」

「どういうことですか?……いえ、それよりも、そんな依頼の仕方が出来る依頼人の名は?」

 ユルドのその問いに、女性は手に持っていた紙を差し出しながら答えた。

「モル・カーディニア。ここカーディニア国の国王陛下でございます」

 そこでギルドハウス内に緊張した空気が漂う。

 冒険者は政治に関わることを嫌う。冒険者たちには規則とも言うべきモノが存在するのだが、それはそれに明確に記載されている訳ではなく、どちらかといえば暗黙の了解の類……いや、これは冒険者の気質のようなもので、そういう訳で王族、それも国王の名が出ただけでギルドハウス内の冒険者に警戒の色が濃くなったのは致し方無いことだった。

「陛下が我々冒険者に何用だろうか」

 ユルドは女性が差し出した紙を受け取ると、それを丁寧に開く。

「………なるほど、確かにこれは我々に依頼するほどの内容だ」

 紙に書かれた依頼内容に目を通したユルドは納得したと数度頷くと、周囲のギルドメンバーに依頼内容を伝えた。

「スキアの大群が南下してきてるそうだ。依頼内容はそれの殲滅もしくは押し返すこと。とにかくカーディニア国への被害が少なくなるように王国兵とともにスキアを討伐すること、だそうだ」

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