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魔法道具36

(それでしたら、貴方はウィンディーネ以上の存在だと?)

 緊張したようなヒヅキの問いに、声の主は考えるような声音で言葉を返す。

『んー、それは分からないな。前にも言ったように、僕は僕が分からないからね。僕は一体何でどんな存在なのかは、僕自身にも不明なのだよ』

(そうなのですか?)

『だから、存在として上かどうかは不明だね。ただ、力としては僕の方が上だろう。随分と手加減しているとはいえ、僕には無いにも等しい力な訳だし』

(無いにも等しい、ですか)

 ウィンディーネがヒヅキに与えた力は、ウィンディーネの本来の力に比べれば大した事はないのだろうが、それでも、ヒヅキにとってはそれだけで脅威と呼べるものであった。

 それに、ウィンディーネの力が及ばないということは、また直ぐに取り込まれる可能性もあるということでもあるが、それを察してか、声の主は言葉を付け足す。

『ああだけれど、僕は別に君を取り込もうとはしていないから安心してくれ』

(そうなのですか?)

『ああ。この前のは一部の者の暴走というか、事故というか』

(どういう意味でしょうか?)

『先に言っておくが、僕は、君は君の好きなように生きればいいと思っている。だから、取り込もうなんて無粋な考えては持っていないよ』

(………………)

『そのうえで話をすると、君も知っている通り、君の中には僕を含めて何人もの存在が居る。何人も居るということは、それだけ考えや思惑があるということだが、そうなると派閥とまではいかないまでも、それに近しいモノが出来てしまう。ここまでは理解出来るかい?』

(はい)

『考えが似たモノ同士で集まるのだが、僕以外に共通する考えは、自分達が表に出る事。分かれているのは、主に君をどうするかだよ』

(私を、ですか?)

『そうそう。例えば、今すぐ君という人格を食い潰して、自分達が乗っ取ろうとする者達』

(ッ………………)

『他にも、徐々に侵蝕していって乗っ取ろうとする者達や、君の人格を眠らせて一時的に乗っ取ろうとする者達とか』

(どれにせよ、私は乗っ取られるのですか)

『そうだね』

 苦い声音のヒヅキに、声の主は軽い調子でそう返す。

『そして、僕は悉くそれに興味が無い』

(何故でしょうか?)

『何故? また随分とおかしなことを訊くね』

(?)

『君の身体に君の人格だろう? ならば所有者は君だ。僕はそれを奪う気はないよ』

(ですが……)

『ん?』

 一瞬言い淀んだヒヅキだったが、意を決して訊いてみることにした。

(未だに精神を蝕まれているのが分かるのですが)

『それは別のもの達さ。君が力を使えば、それだけ侵蝕していく』

(では、この力もそのためだと?)

『そういう者も居る。まぁ、僕は経緯はどうあれ、家賃代わりと思っているのだがね』

(家賃ですか?)

『この場所に住んでいる以上、その対価は支払うべきだろう? たとえ本意でなくとも』

(………………)

『ああ、一応言っておくが、僕達はここから出られないから。少なくとも、今は君をどうこうする以外に手立てはないね』

(そう、なのですか)

『それで、話が逸れたから戻すが、君は普通に寝たいのかい?』

(……いえ、多少は寝たくはありますが、そこまで欲している訳では。ただ、今回のような時は必要なだけです)

『そうか。なら、特に手出しはしないでおこう。それでも、君に眠る意思があった時だけは手助けしよう』

(それと、取り込まれそうになって以来、少し感情が変わった気がするのですが)

『それは一部の者達の感情が流れ込んでいるんだね。乗っ取ることを邪魔された事もあるが、中には君がウィンディーネと呼ぶあれに痛い目を合わされた者も居るみたいだからね』

(痛い目ですか?)

『有り体に言えば、殺されたのさ』

(殺された、ですか……)

『君にも心当たりがあるだろう? そういうことさ』

 声の主の言葉に、ウィンディーネの言動を振り返ったヒヅキは、すんなりと納得出来てしまった。

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