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魔法道具24

 料理が出揃い、それぞれが食膳の祈りを捧げると、二人は食事を始める。

 リケサの料理は、朝食は量が少ない代わりに品数が多く、夕食は品数が少ない代わりに量が多かった。

 ヒヅキ的には様々な種類が食べられる朝食の方が好きではあったが、決して1皿の量が多い夕食が嫌な訳ではない。ただ、エルフの国の料理を色々と食べられるというのは貴重な経験なだけで。

「今日はどうするの?」

 食事も半ば辺りで、リケサがヒヅキに問い掛ける。

「町の散策の続きをしようかと」

「そっか。どの辺りを見てくる予定?」

「先日は道を巡って中心地とその付近を回ったので、今日は町の外側へ足を延ばしてみようかと」

「なるほどね。今は治安も良くなってきたからね……こうなる前の話だけれど。今はほとんど誰も居ないから、そういう意味では治安がいいとも言えるね」

「そうですね。先日も目にした方は数える程でしたから」

「逆に誰も居ないからこその悪党も居るかもしれないから、その辺りは気をつけて」

「分かりました」

「僕は今日もずっとここに居る予定だから、何かあったら呼んでくれていいから」

「ありがとうございます」

「はは。友達なのもあるが、今はヒヅキしかお客さんが居ないからね」

 リケサは食事の手を止めて若干自虐的に笑うと、直ぐに食事を再開させる。

「ああそういえば、昨日猟師の話を少ししたと思うんだが」

「ええ」

 ヒヅキは丁度1日前の話を思い出し、頷いた。

「今朝早くに外で会ったんだけれど、なんでも昨日思い切って町を出たところ、スキアに遭遇したらしくてね。それでもう駄目だと思ったところで光が走り、スキアが消えたらしいんだよ」

「へぇー。不思議な事があるものですね」

 昨日の森での出来事を頭に思い浮かべ、ヒヅキはあの事かと思いながらも、それを口にはせずにそう返す。

「猟師も何が起こったか分からないらしくてな、もの凄く困惑してたよ。もしかしたらエスタトゥア様がお救いに下さったのではないか? とか言っていたし」

「エスタトゥア様ですか?」

 聞き慣れない言葉に、ヒヅキは首を傾げる。それにリケサは、「あ」 と小さく漏らした。

「ごめんごめん。エスタトゥア様はこの町を守護してくださっている神様の名前でね」

「神様の名前、ですか? しかし、私の記憶に間違いが無ければ、エルフの信仰する神に名前は無かったはずですが?」

「ああ、それで合っているよ。これはこの町に在る、ヒヅキが先日訪れた神様の像の名前だから」

「はぁ」

「まぁ、住民が勝手に呼んでるだけだがね。正直あれは神様を模したといっても、神様ではないから。それでもこの町に長いこと在るものだから、親しみが湧いたんじゃないかな?」

「なるほど。それで、あの像が助けたと?」

「本気では思ってないだろうけどね。それでも我らが神がお救い下さった、ぐらいは考えてるだろうが」

「そうですか。ですが、もしかしたら何処かへ移動しただけでは? スキアの移動速度はもの凄く速いですから、消えたと錯覚されてもおかしくないかと」

「ああ、その可能性もあるのか。まぁなんにせよ運がよかったよ」

「そうですね」

 それには心から同意しつつ、丁度良い区切りとして二人は食事を終える。

「今日も美味しかったです」

 ヒヅキはそう一言リケサに告げると、続けて料理の感想を伝えて席を立つ。

「それはよかったよ」

 それを聞いてリケサは嬉しそうに微笑むと、立ち上がって食器の片付けを始めた。

「それでは」

「ああ」

 そんなリケサに軽くお辞儀をしたヒヅキは、食堂を後にする。

(しかし神様、ね。バレてなくてよかったが、俺は神とやらにあまりいい印象がないからな……)

 自室に戻る途中、ヒヅキは先程のリケサの話を思い出し、思わず苦笑を浮かべる。

(ま、騒ぎにはならなさそうだから別にいいが)

 直ぐに苦笑を引っ込めると、ヒヅキは自室に戻って出しっぱなしだった容器を背嚢に仕舞ってから、背嚢を手に外へと出た。

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