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魔法道具22

「無駄、ですか?」

 ウィンディーネの言葉を、ヒヅキは聞き返す。

「ええ。その平面的な感覚を基に改良としたところで、平面は平面だもの」

「……なるほど。では、どうやれば?」

「んー」

 そのヒヅキの問いに、ウィンディーネは困ったような声を出した。

「私は元からそれが出来たから説明が難しいのだけれども。そうね……気配を探るのではなく、周囲を撫でていくというか……それを認識する必要があるのよね」

「それ、ですか?」

「例えば、ここならば周囲にある木々を認識するでしょう」

「どうやってです?」

「そうね、人間に理解出来るように説明するにはどう言えばいいのかしら……んーそうね、魔力で周囲を撫でていく、みたいな感じかしら?」

「魔力で周囲を撫でる、ですか?」

 ウィンディーネの説明に、ヒヅキは難しい表情を浮かべる。

「そう。ヒヅキは魔力の扱いが上手いから、魔力を感じる事は出来ているわよね?」

「多分ですが。この感じているモノが魔力なのであれば、出来ているかと」

「なら、それを外に拡げていけばいいのよ。全てを撫でていくように」

「……はぁ」

 ウィンディーネの説明に、ヒヅキは困惑したような声を出した。というのも、ヒヅキが普段行っている気配察知も、撫でている訳ではないが、似たような事をしているからだ。

 しかし、折角説明してもらったのだからと、全てを撫でていくという部分を意識して、魔力が全てに触れながら拡がっていく感覚で、体内から世界へとどんどん拡げていく。

「…………うーん」

 ヒヅキはウィンディーネの言葉通りにやってみるも、中々巧く機能しない。なんというか、合わないのである。

「無理かしら?」

「はい。すみません」

「別にいいわよ。私も説明が上手くなかったから。やはり最初から出来ていると、中々説明が難しいものね」

「もう少し色々試してみます」

「そう? まぁヒヅキなら出来るはずなのよね……」

 考えるように言葉を切ると、ウィンディーネはそこで黙ってしまう。

 ヒヅキはそれが少し気にはなったが、今は自分の事に集中しようと、目を瞑り意識を体内にを巡る魔力と思しきモノに集中させていく。

(ウィンディーネの説明も何かしらの本質をついていると思うのだが)

 そう思うも、それを思うように結果に繋げられない。

(んー、何かが違う。これは俺には合わない、ということか? ならば何が俺向きなのか……そもそも、何故こんなことが出来たんだったか?)

 ヒヅキは記憶を探り、自分が気配察知できるようになった時の事を思い出そうとする。

(今の気配察知にはかなり劣るが、旅に出る前には既にこれの原型は使えていた。だが、いつからだ?)

 どんどん過去に遡っていくも、村を友を家族を失ったあの時にはまだ使えてはいなかった。

(その後から旅に出る前までの間か。昔ここに来た時には既に使えてい……たっけか? エルフの国から帰って少しした頃には使えていた記憶はあるんだが)

 その辺りが微妙な部分である為に、ヒヅキは子どもの頃にエルフの国を訪れた時の事を思い出そうと記憶に集中していく。

(あの時、俺は叔父の手伝いとしてエルフの国に連れてこられたが、あの時は使えて、いたか? うーん、昔過ぎて記憶が薄くなっているな。エルフの国へと入国後、叔父にエルフについて教えてもらいながらこの町に来たが、結局俺が手伝える叔父の用事なんて一月ほどでほぼ終わってしまった。その後は朝と夜に少し物書き計算をやらされたぐらいで、大半をフォルトゥナの元へ通ったが……そもそも何故、俺はフォルトゥナの元へと通い出したのだったか?)

 十有余年も前の記憶であるが故に、あまりにも曖昧としている記憶を蘇らせようと、ヒヅキは一時、地形を把握するために気配察知に割いていた思考を脇に措いて、エルフの国での出来事について思いを馳せていく。

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