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魔法道具17

「ウィンディーネ。もしかして、私の生命力を吸い取りました?」

「ええ、美味しかったわよ」

 ヒヅキの問いに、ウィンディーネは悪びれることなくそう答える。

「…………それは眠るというよりも、意識を失うでは?」

「同じ事よ。結局眠るのだから」

「……………………」

 ヒヅキは頭痛を堪えるように頭を押さえる。

「……それで、生命力を取られると寿命が減るのでしたか?」

「ええ、普通はね」

「普通は?」

「ヒヅキはその限りでない、ということよ」

「どういう…………」

 言葉の途中でヒヅキは口を閉ざす。それについては思い当たる節があった。

「…………この中の存在、ですか」

「ふふ。さぁ?」

 ウィンディーネは小さく笑うと、小首を傾げる。その態度が答えということなのだろう。

「……………………これは、なんですか?」

「さぁ?」

「教えては下さらないので?」

「分からないことは教えられないわよ」

「本当に分からないので?」

「ええ。それが何か知りたいのであれば、神に問う事ね。それかそれ自身にかしら」

 いつもの何か企んでいる様な含む物言いながらも、それはおそらく事実なのだろう。しかし。

(何か誘導されている気がするんだよな。この場合どちらにだ? それとも別の方角か?)

 ウィンディーネの返答に、ヒヅキは真意を推し量ろうとするも、それも難しい。先程のような事の方が例外なのだ。

(……分からない。両方かもしれないし、全く違う方向かもしれない。それか、こうやって考えさせるのが目的かもしれないし)

 ぐるぐると頭の中に様々な考えが浮かんでは沈んでいくが、どれだけ考えても明確な答えは出てくれない。

「答えはでたかしら?」

 そんなヒヅキの姿を愉しんで見ていたであろうウィンディーネが、十分時間を置いて声を掛けてくる。

「いえ。私如きでは無理そうですね」

「そう。でも、ヒヅキなら大丈夫よ」

 適当な言葉で励ますウィンディーネ。その根拠のない無責任な掛け声は、ただ愉しみたいだけでしかない。

「そうですか」

 それを理解しているヒヅキは、そう流してベッドから降りる。

「さて、朝食は出来ているのかな?」

 ヒヅキが部屋の外に出ると、食欲を刺激するいい匂いが漂っていた。

 その匂いを辿って食堂へ移動すると、丁度リケサが朝食を机に並べているところであった。

「ああ、おはよう! ちょうどこれを並べ終わったら起こしに行こうと思っていたところだよ」

 顔を上げたリケサに、ヒヅキも挨拶を返す。

「さぁ座って朝食にしよう」

 二人は向かい合わせで席に着くと、朝食を食べ始める。机に並ぶ食事は乾物が多いものの、しっかりと時間をかけて戻されているのでとても美味しい。

 乾物でない物は森で取れるものだが、肉は干し肉しかない。それが気になったヒヅキは、リケサに尋ねる。

「スキアの影響で動物が居なくなったのですか?」

 干し肉を手にしてのヒヅキの問いに、リケサは首を横に振る。

「減った訳ではないが、スキアが何処に居るか分からないから、町から離れられないのさ。あんまり意味はないだろうけれど」

 肩を竦めて皮肉げに笑うリケサに、ヒヅキはなるほどと頷いた。

「では、肉の調達が出来ていないので?」

「町に迷い込んだのを狩ってはいるが、数は少ないね。おかげで猟師はお手上げさ。ま、残ってる猟師も一人しか居ないが」

「そうなんですか」

「だから、いずれこれも無くなるね。まぁ、肉が無くても死にはしないさ」

「そうですね」

 エルフは雑食だが、特段肉を好むわけではない。元々の食生活からして肉の割合がそこまで大きい訳ではないので、現状でも問題ないのだろう。

「それで、今日はどうするんだい? 観光の続きかな?」

「今日は河を見に行ってみようかと思っています」

「そうか。河は町から近いが、気をつけて行くんだぞ? スキアもだが、動物も結構危ないからな」

「分かりました」

 リケサの忠告に、ヒヅキは礼を伝える。スキアであろうと動物であろうと対処可能だが、だからといって油断は禁物だと肝に銘じながら。

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