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魔法道具14

 ヒヅキは道を通って町を一周するも、道が通っているのは中央部分だけなので、外にも町は広がっている。むしろ道の通っている中央よりも、道が作られていない外の方が広い。最初に訪れた貧民窟だった住宅地も、町に作られている道から外れた場所にあった。

 なので、ヒヅキは道の外れにも足を延ばしてみようかと考えたが、周囲がもう暗くなっていたので、一度空を見上げて、宿屋を目指す。

「あ、お帰り」

 程なくして部屋を取っている宿屋に到着すると、受付で何か書き物をしていたリケサに迎えられる。家の中にはいい匂いが少し漂っているので、夕食はもう出来ているのかもしれない。

「夕食はどうする?」

「頂きます」

「じゃあ直ぐに用意するよ。荷物を置いたら食堂に来てね」

「分かりました」

 そのまま食堂へと移動するリケサと別れると、ヒヅキは借りている部屋に入る。

 部屋の中に在る荷物入れに背嚢を仕舞うと、ヒヅキは部屋を出て鍵を閉めてから、食堂に移動した。

「ああ、丁度良かったよ」

 机に食事の載った盆を置いていたリケサは、食堂の入り口へと顔を向けて、入ってきたヒヅキへとそう声を掛けた。

「さ、夕食にしようか」

 ヒヅキが席に着くと、自分の分の料理を持ってきたリケサがヒヅキの向かい側に腰を下ろす。

 それぞれが食前の祈りを捧げると、食事を開始していく。

「今日は何処に行って来たの?」

 夕食を食べ始めて少しして、リケサがヒヅキに話し掛ける。

「偶像を見に行ってきました」

「そっか。あれも一応まだ手入れされているけれど、それもいつまで続くのかね」

 リケサはどこか遠くに話し掛けるような口調で、そう言葉にする。それはこの町の現状を表しているようであった。

「スキアの動きについて把握できているんですか?」

「僕は出来ていないけれど、首都の方は分からないね」

「そうですね。どれぐらいスキアが入り込んでいるかもでしょうか?」

「分からない。というか、そんなことが把握できるものなの?」

「襲撃された町の情報を集めれば、ある程度までは可能では?」

「まぁそれはそうだけど、襲撃された町は残っていないからな。生き残った住民もかなり少ないと聞くし。それもスキアが攻撃するより前に逃げ出せた住民がほとんどらしいから」

「なるほど。その辺りはカーディニア王国の方でも似たようなモノだったと聞いていますが、防衛した拠点は無かったのですか?」

 カーディニア王国の場合、初動から冒険者を集めて防衛に注力したおかげで、ある程度は情報を収集する時間は確保できていた。

「あったけれど、森の中でスキア相手では相性が悪かったのかもね」

「それは確かにそうですね」

 スキアに地形は関係ない。森の中だろうと水の中だろうと岩場だろうと、まるで平野を掛けるが如く移動してくる。

 そんな相手では、視界の確保が難しい森の中は不利だ。それに、スキアは遠くから一瞬で懐に滑りこんでくるような速度で迫ってくるので、たとえ森に慣れているエルフの冒険者であろうとも、対処は容易ではない。

「それで結局、防衛する場所を首都に絞り込んで籠っている訳だし。それでもアルコ様が居なければ、とっくに落ちているとも聞くね」

 前日にリケサに聞いた話を思い出したヒヅキは、ひとつ頷く。ガーデンの時も、結局ヒヅキが居なければ落ちていただろうから、スキア相手の防衛というのは非常に難しいのが分かる。

「ここも護っているというお話しでしたね」

「そうだよ」

「今日一日町に滞在してみて、スキアが襲撃してくる気配はなかったのですが、いつもこんな感じで?」

「うん。スキアがこの国を襲った最初の頃では、この町にもそこそこ攻めてきていたのに、ある日を境に急にこんな感じになったね。それでもたまに襲撃してくるけれど」

「なるほど。それで、そのアルコさんは間に合うので?」

「間に合うよ。一瞬で駆けつけてくれるから。それに、アルコ様が居る時に襲撃がある事の方が多いからね」

 それでも居ない時の襲撃もあるということだ。スキアに掛かれば、こんな町は数秒で潰滅できるだろう。完全に破壊するには、もう少し時間がかかりそうではあるが。

「そうでしたか。それならば安心ですね」

 ヒヅキは少し疑問に思いつつも、そうリケサに返す。

 それを受けたリケサは、アルコという女性を信じているのが判る、良い笑みを浮かべた。

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