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魔法道具10

「本当だったの!! どうやって!?」

 あまりの驚きにリケサは勢いよく身を乗り出した為に、手元にあった飲み物が入っていた容器を倒してしまう。幸い中身はあまり入っていなかったので、大惨事にはならなかった。

「襲ってきたスキアを撃退したようですよ」

「撃退って、スキアの数が少なかったの?」

 それどころではないのか、容器を倒したまま、リケサは話を続ける。

「いえ、総数は数千以上居たと聞いていますね」

「なっ! それはここと同じぐらいかそれ以上じゃないか!! それをどうやって? 人族の冒険者はそんなに強いのか!」

 興奮して顔を近づけてくるリケサに、ヒヅキは苦笑気味に身を引く。

「それに、人族の街はここのように森の中にあるわけじゃないんだろう? スキアが一気に押し寄せてきたりはしないのか!?」

 質問を重ねてくるリケサに、ヒヅキはどう答えたものかと考える。

 ヒヅキ自身が殲滅したことは言わないのは当然として、どんな風に話をするべきかと思いはしたが、ガーデンの住人達がしていたうわさ程度ならいいだろうと、一部の誇張部分を排して話始めた。

 興奮しつつも、大人しく話を聞いたリケサは、信じられないという表情でヒヅキの方へと視線を向ける。

「冒険者不在なうえに、たった一人でスキアの大群を殲滅したと? それも首都を守りながら! そんなことが可能なのか!?」

「ええ。実際それが行われた訳ですから」

「それはそうだが……信じられないな。どうやったらそんな偉業が成せるんだ?」

「さぁ? それは私に訊かれても困りますが」

「まぁ……それもそうだな」

 困った表情を浮かべたヒヅキに、リケサは少し冷静になって顔を引っ込める。

「しかし、そんな事が出来る存在が居るとはな。もしかしたら、アルコ様ならば同じ事も可能かもしれないが」

 話ながら倒れた容器を戻したリケサは、難しい顔をしたまま、まだ少し残っていた食事を平らげていく。

「スキアが居なくなったなら、人族からの援軍は……期待できないか。そもそも要請自体していなさそうだしな」

 食事を終えたリケサは、困ったような呆れたような表情を虚空に向けた。

「エルフ達は他種族に頼ったりはしなさそうですからね」

 誇り高いというよりも、他種族を下に見ているエルフにとって、危機的状況だとしても、他種族に救援を乞うなどしない可能性があった。そんな事をするぐらいであれば滅んだ方がマシだと本気で言い出しかねない。首都に住まうエルフ達は特に。

「今こそ認識を改める時だというのに」

 どこか嘲笑するような響きで口にしたリケサは、一つ息を吐きだした。

「難しいものだな。スキアに殺された同胞は、遺体さえろくに残されていないというのに」

 口惜しげに言葉にしたリケサだったが、すぐに気を取り直して、食事を終えた二人分の食器を片付け始める。

 エルフは、遺体を特定の木の根元に埋葬して弔う習慣があった。それは土に還り自然と一体化して、子孫を見守り続けるという意味らしいが、遺体が残らないということはそれが不可能という事であり、エルフ達はそれを大層忌み嫌っていた。

 ヒヅキは片付けをしているリケサに食事の感想と美味しかったことを伝え、同時に礼を言ってから部屋に戻っていく。

(それにしても、氷の女王ね)

 部屋に戻ったヒヅキ、先ほどの話を思い出して、その存在について考える。

(俺のような存在ということは、どこからか力を借りているのだろうか?)

 その可能性を考えたヒヅキは、ウィンディーネに問いかけてみる事にした。

「ウィンディーネ」

「何かしら?」

 呟くような大きさでのヒヅキの呼びかけに、即座に返答が得られる。

 それにヒヅキは、今しがた考えたことを問いかける。先程のリケサとの話をウィンディーネは聞いていたはずなので、その辺りの説明は省く。

「まぁ……そんなところね」

 少し間をおいての返答ではあったが、その程度のことは今更気にするようなことではない。

「何から力を借りているのですか?」

「うーん、それは教えられないわね」

「そうですか」

 とりあえず、何かしらから力を借りているということが判れば十分だったので、ヒヅキはそれ以上の追及はしない。それにウィンディーネは訊いても話さないというのは学習済みであったし、そんな事が出来る存在は限られていた。

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