ギルド
街灯の月明かりのように優しい光が照らし出す道を、ヒヅキはリイドたち五人の後に続いて歩いていく。
昼から降り続いていた雨も気づけば止んでいたが、未だ空は雲が覆っていた。
そんな薄暗いはずの世界でも、街灯と建ち並ぶ家々から漏れる灯りのおかげで、ヒヅキは不自由なく道の先が見通せた。
「あれがギルド本部だよ!」
ヒヅキの右斜めを2歩ほど先に歩くサーラが顔をヒヅキに向けると、道の先で煌々と明かりを灯す一軒の建物を人差し指で指し示した。
それはとても大きな建造物で、見渡しても端の方が闇に隠れて見えないほどで、見上げると、途中から空に広がる暗闇に飲み込まれてしまっていた。
「……………」
ヒヅキがその大きさに呆けるようにその建物を見上げていると、サーラが「さ、中に入るよ!」という言葉とともに、ヒヅキの手を掴んで引く。
突然のことに一瞬転びそうになったヒヅキだったが、持ち前の運動神経ですぐに体勢を立て直すと、サーラに手を引かれたまま後に続いてギルド本部に入っていった。
「………すごいな……」
ヒヅキの呟きに、サーラは機嫌よさげな笑みを浮かべる。
ギルド本部の内部は外観同様とても広かった。
扉を開けたその先には開けた空間が広がっており、奥には受付だろうか、カウンターのようなものと、その内側には女性が微笑を浮かべて座っていた。
入り口と受付の間の広い空間には、掲示板のようなものがいくつか立っており、そこには何枚もの紙が貼られていた。
天井は吹き抜けになっていたが、夜ということもあり、暗さで屋根までは確認出来なかった。そして、床は大理石だろうか、一枚で作られてるかのように綺麗に並べられ、目を凝らさないと繋ぎ目が確認出来ないほどであった。
「お金掛かってるなー」
室内を飾る装飾品も含め、建物の内装のあまりの見事さに、ヒヅキはつい驚愕とともにしみじみそう呟いてしまう。
「さ、まずは報告からしないと。カタグラの確認とかがあるからちょっと時間掛かるけど、今は人が少ないからすぐ終わるでしょう。その確認の時にでも、あの時の様子を確認したいし」
そう言うと、サーラは意味深な笑みをヒヅキに向けたのだった。