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竜神6

 そのまま、しばらく壁伝いに歩いていると、ヒヅキは暗闇の中に何かを見つける。

「何だ?」

 警戒しつつそれに近づくと、それは朽ちた鎧と、それを着ていたと思われる骸骨。その傍らには、ボロボロの剣が転がっていた。それが三人分。

「これは……侵入者?」

「ずいぶん昔のね」

「武装していますね」

「ええ。たまたま迷い込んだ訳ではないでしょう。それに」

「それに?」

「……これは多分冒険者ね」

「冒険者、ですか。何故ここで果てたんでしょう?」

「んー。さぁ? あの子にでもやられたんじゃない?」

「なるほど。ですが、何の目的で来たんでしょうか? 竜神討伐なんて意味があるとは思えませんが」

「名は売れるでしょう」

「恨みも買いますがね」

「ふふ。そうね。じゃあ、財かしら?」

「財? 竜神は宝物でも持っているので?」

「神には貢物がつきものよ」

「なるほど。しかし、それだとこれは……傭兵?」

「傭兵? ああ、そうかもね」

 ヒヅキの言葉に少し考え、ウィンディーネは思い出したように頷いた。

「傭兵はどこにでも居ますね。それにしても、冒険者とは何なんでしょう?」

「何、とは?」

「世間の認識では、冒険者は一般人よりも格段に強いというものですが、私は冒険者ではありませんし、本当にそうなんでしょうか? 何か違うような気がしまして」

「まぁ、そうね。冒険者は基本的に強い傾向があるけれど、別に強さが冒険者の証ではないわよ」

「では?」

「世界が幾度も滅びたのは知っているわよね?」

「はい」

「本来冒険者というのはね、その滅びた各世界から今の世界に呼び出された者達の事を指すのよ」

「呼び出された? 誰にですか?」

「神によ」

「何故?」

「前にも言ったと思うけれど、面白そうだからじゃないかしら?」

「……神と呼ばれる者達は、皆そんな感じなのですか?」

「そんな感じ?」

「……他人を玩弄するのが好きといいますか」

「あら? 私はそんな事ないわよ? それは頂点に座す真なる神だけよ」

「……そうですか」

 疲れたように息を吐いたヒヅキに、ウィンディーネは楽しげに笑いかける。

「ええ。だって、私はヒヅキにしか興味ないもの。ヒヅキは私を楽しませてくれているものね」

「……不本意です」

「ふふ。まぁそう言う訳で、現在の冒険者の中で、本来の意味で冒険者と呼べる存在は半分にも満たないわね。中には冒険者に分類されていない冒険者も居るようだし」

「そうなんですか!?」

「現在の冒険者の大半は、昔の冒険者の子孫で、力を受け継いだ子達ね」

「なるほど。しかし、呼び出された冒険者も健在なのですよね?」

「定期的に新しく呼び出されているからね」

「それはまた、迷惑な話ですね」

「ヒヅキにとってはそうかもね。だけれど、呼び出された当人にしてみれば、世界の破滅に巻き込まれるのを回避できている訳だから、スキアにならず良かったという事になるわよ」

「それは、まぁそうですが」

「それに冒険者は神から何かしらの施しを受けているから、呼び出される前よりも強くなっているのよ。それは喜ばしいことじゃない? そもそも冒険者が居なければ、ろくにスキアに対抗出来ずに、今頃とっくに滅んでいたわよ」

「……ままなりませんね」

「ふふ。好きに出来るのなんて、それこそ神ぐらいよ」

「ウィンディーネのような?」

「私のような紛い物ではなく、本物の神よ」

「そうですか」

 ヒヅキはその神について考えてみるも、上手く想像できない。もしもあの声が神だとしても、姿までは見ていないのだから。

「その神は、この力に関係が?」

「さぁ? それは分からないわね」

 神の話題になったついでに訊いてみたヒヅキであったが、ウィンディーネは惚けたように肩を竦める。

「そうですか」

 予想通りの反応に、ヒヅキはそう返しつつ周囲に目を向ける。時折見つけた罠は、回避できそうなものは回避して、必要な場合は解除していく。

「先程の話ですが、冒険者の見極め方なんてものは在るのですか?」

「私達のような存在以外では、確実に本当の意味での冒険者を見極める方法は無いわね。話を聞いて、冒険者かどうかを判断するしかないわ。ヒヅキのその気配察知の能力も、ヒヅキが冒険者と認識したモノにすぎないもの」

「そうですか。それは残念です」

 ウィンディーネの返答を聞いたヒヅキは、残念そうに首を小さく横に振る。

「ふふ…………そうね」

 しかし、それにウィンディーネは含み笑いを浮かべながら、僅かに目を細めた。

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