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斜陽65

 ヒヅキはエインとプリスと共に外に出ると、途中で二人と別れる。

「じゃあな。用事が終わったらちゃんと会いに来いよ」

「ええ。勿論です」

「では、またヒヅキさんの用事が済んだ後に」

 そう言うと、二人は王宮へと向かう。周囲に人の姿が無いとはいえ、王族が実に堂々としたものだ。

 ヒヅキは二人の背中をしばし見送ると、足の向きを変えて南門の方へと移動する。

(それにしても、本当に活気が戻ったものだな。あれからまだ一年も経っていないというのに)

 現在のカーディニア王国は、ガーデン以北のほぼ全土がスキアの被害に遭っている。勿論、難を逃れた場所もあるが、主要な町は大体スキアにより荒らされていた。

 その為、逃げ延びた住人などは主にガーデンやソヴァルシオンに流れついていたが、ガーデンをスキアが囲った一件で、ガーデンからソヴァルシオンへ流れていった者が多く、ヒヅキが出ていく前は、少し活気が戻っていた程度であった。

 それが現在は大分賑やかになり、流民についても、人手不足で仕事が山の様にあるので問題ない。住居の方も、あまり使われていなかった場所を区画整理したことで、何とかなっているようだ。それでも住民の数は、未だ完全には戻っていないようだが。

 街中は活気がありつつも比較的穏やかで、少し前まで侵攻軍が近くに駐留していたとは思えない落ち着き様であった。

 ヒヅキは保存食などの必要品を補充するために途中で店に寄りつつ、周囲の話に耳を傾けると、どうやら侵攻軍についてはいまいち詳細が知らされていないようで、何処かに行ったという事だけが広がっているようではあるが、それでもよくよく話に耳を傾けてみれば、中には王妃の旗がとか、王家を騙る賊がとか、忠義の騎士様が、などという話もちらほら聞こえてくる。

 そんな風に街中を見学しつつ、途中で買い物をしながら南門まで移動すると、ヒヅキはもっとも外側にあり、以前にスキアによって壊された第一の門を見上げる。

(一応、門とその周囲の防壁が直っている)

 前ほど頑丈そうではないが、それでも、応急処置よりは少しマシ程度までには直っていた。

 それらを見ながら進むと、簡単な検査を受けてガーデンを出る。

(さて、遺跡を目指す為にも、まずはあの森を抜けないとな)

 そう思うが、ヒヅキの知る名も無き村経由の道では、あの村近くまで行かなければならない。それは何となく気が乗らなかった。

 なので、ヒヅキは街道に沿って森に入ると、人が通っている道と思しき場所を通って森を抜けてみる事に決める。

 道を進むと、森が段々と深くなっていくが、最近大勢の人間が通ったからか、道は割と分かりやすい。しかし、それも森の中程までであった。

(うーむ。……迷った、か?)

 途中で急に森が深くなったり道が細くなったりとしたうえに、その途中で道が分岐していた場所も幾つか在ったりで、結果として、ヒヅキは道に迷っていた。

(俺は森との相性が悪いのだろうか?)

 思わずそう思ってしまうほどにヒヅキは森で迷う事が多く、遺跡調査の時もウィンディーネが居なければ、もう少し時間が掛かっていた事だろう。そういう部分だけは、ヒヅキはウィンディーネに感謝している。

(……しょうがないか)

 ヒヅキは周囲を調べながらしばらく進んだものの、諦めてウィンディーネに尋ねてみる事にした。

「ウィンディーネ。ソヴァルシオンの方向へ抜けるには、どちらの方角に進めばいいか分かりますか?」

「ソヴァルシオン?」

「ガーデン、入ってきた森の入り口から南西の方角に在る街です」

「南西……ねぇ」

 少し沈黙を挿むと、ウィンディーネは言葉を続ける。

「東……ヒヅキの左手の方角ね。そちらに向けて真っすぐ進めばいいと思うわよ」

「左ですね、ありがとうございます」

「これぐらいは構わないわよ。だけれど、そろそろ周辺を探索出来るようになった方がいいと思うけれど」

「私に出来るんですかね?」

「ヒヅキなら可能だと思うわよ」

「そうですか。なら、少しずつ練習してみますか」

「それがいいわね。ヒヅキは直ぐに迷子になるもの」

「そんな頻繁には……」

 ウィンディーネの物言いに、ヒヅキは思わず苦笑する。

「あら、何度もこうして案内したと思うけれど?」

「それは感謝していますが」

「割と頻繁だと思うのだけれど?」

「……まぁそう言う事で……はい」

 実際は数えるほどだとしても、事実迷っているだけに、あまり強くは言えないヒヅキであった。

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