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斜陽50

 扉を叩く音でヒヅキは目を覚ます。隣には既にウィンディーネの姿は無かった。しかし、近くに居る気配だけはしている。

 ヒヅキはベッドから出ると、扉へと移動する。そこに居るのがプリスである事は判っているが、一応扉越しに誰何の声を上げた。

「おはようございます。ヒヅキさん。プリスで御座います」

 扉越しにそう返ってきて、ヒヅキは扉を開く。そこには、いつもの侍女服姿のプリスが立っていた。

「プリスさん、おはようございます」

 ヒヅキはプリスに笑みを浮かべて挨拶をする。

「おはようございます。ヒヅキさん。朝食の準備が整いましたが、いかがなさいますか?」

「いただきます」

「では、こちらへ」

 言葉に甘える事にしたヒヅキは、室内に置いていた背嚢を掴むと、プリスに先導されて廊下を進んでいく。

「エイン様にヒヅキさんの事をお伝えしましたところ、今夜にはこちらにいらっしゃるとのことでした」

「そうですか。分かりました」

「それまでどうなされますか?」

「そうですね……」

 プリスの言葉に、ヒヅキは思案する仕草を見せる。実際、特に何も決めていなかったので、久しぶりに何も無い時間という事になる。

 しばらく考えたところで、食堂がみえてきた。

「久しぶりに図書館にでも行ってみようかと思います」

「そうですか」

 食堂に入ると、プリスはヒヅキの為に椅子を静かに引く。

「ありがとうございます」

 それに礼を言って、ヒヅキはその椅子に腰掛ける。手に持っていた背嚢は足下に置いた。

「それでは、昼食はいかがなさいますか?」

「外で適当に済ませます」

「そうですか? 必要であれば、何か御作り致しますが?」

「お構いなく」

「畏まりました。朝食を御持ちいたしますので、少々御待ちください」

 そう言うと、プリスは食堂を出ていく。

(図書館で調べる事、か)

 それを見送ると、ヒヅキは思案する。思いつきでの発言ではあったが、遺跡で見つけた物を一度調べてみるのもいいかもしれない。

 そう考えていると、プリスが食堂に朝食を運んでくる。

 朝食はこぶし大のパンが2つに、焼いた肉を一口か二口ぐらいの大きさに切り分けたものを3枚。それに、野菜が少量添えられており、飲み物は野菜と果物を絞って混ぜ合わせたものであった。

「ありがとうございます」

 目の前に置かれたそれに、ヒヅキは礼を言う。

「隣に座っても宜しいでしょうか?」

「ええ、勿論」

 プリスはヒヅキの隣に自分の分の朝食を並べると、椅子に腰かけた。

 食前の祈りを捧げた後、朝食を摂る。

(しかし)

 パンを齧りながら、ヒヅキはふと思う。

(この人々が祈りを捧げている相手の一人に、ウィンディーネもいるのだろうな)

 ヒヅキ自身は神に祈りなど捧げていないが、ウィンディーネも一応神である以上、祈りを捧げられる対象であってもおかしくはない。

(つくづく面倒な相手に目を付けられたものだ)

 そんな事を考えつつ料理を堪能すると、朝食を終える。

「美味しかったです」

 ヒヅキは同じぐらいに食べ終わったプリスへと、そう食事の感想を伝えた。

「それはよかったです」

 ヒヅキの感想に、プリスは笑みを浮かべる。

「少し早いですが、早速図書館に向かおうと思います」

「場所は分かりますか?」

「はい」

「そうですか。では、玄関まで御見送りさせてください」

 ヒヅキは背嚢を背負うと、プリスに見送られながら屋敷を出て、図書館に向けてガーデンの街を進む。いつもシロッカス邸から向かっていた為に、違う道というだけで、街中が少し新鮮な光景に見えた。

「ん?」

 その道中、昨日よりも騒がしい街並みに、ヒヅキは内心で首を捻ると、喧騒に耳を傾ける。

「殺しだとよ。それも一夜で何件も起こったとか」

「聞いた話じゃ、全員冒険者だったらしいよ!」

「はぁ? 冒険者どもは、俺らを見捨ててソヴァルシオンに拠点を移したんだろ?」

「いや、それは違うらしいぞ。何でもあの第二王子が――」

(ああ、昨夜の件か……他の冒険者達はどうしているのだろうか? 気配は捉えているし、図書館に向かう前に少し様子を見てみるか)

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