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斜陽46

 室内に入ったヒヅキは、周囲の様子を確認する。

(誰か寝ているな。標的ではないようだし、起こさないようにしなければ)

 足音を消して扉に近づくと、外の気配を確認してから、鍵を開けて外に出る。

「…………」

 そこでヒヅキは少し考え、廊下に在った窓の鍵を開けた後、部屋に戻り扉に鍵を掛けた。それから窓から外に出て、壁伝いに鍵を開けておいた窓まで回り、廊下へと侵入した。

(さて、近いところから行くか)

 常に警戒しつつ、廊下を移動する。

 既に出入り口が施錠されていただけに、寝静まっている者が多いようで、宿屋内はしんとしていた。

 そんな中、最初の標的の部屋前に到着すると、まずは中の様子を窺う。

(……寝ているのか?)

 室内には二つの気配が在るものの、動く様子もなければ、音もしない。

「…………」

 ヒヅキは鍵がかかっているのを確認すると、出力をかなり抑えた光の剣を現出させて、鍵を切断する。

 そうして静かに扉を開いて室内に入ると、ヒヅキは寝ていた二人へと、人間には毒である薬を塗った針を刺した。

(次っと)

 二人の鼓動が止まったのを確認したヒヅキは、部屋を出て扉を閉めると、次の標的の泊まっている部屋へと移動していく。

 そうして、宿屋内に居た全ての標的の冒険者を始末し終えると、入ってきた廊下の窓から外へと出ていった。

(やはり結構時間が掛かるな)

 ヒヅキは天上に輝く月を忌ま忌ましげに睨むと、最後の標的達が泊まる宿屋へと向かう。

 その宿屋は、そう離れていない場所に建っていた。

(ここも寝ているようだな)

 2階建てのその宿屋は、少し大きな民宿といった感じの、どこか野暮ったさのある、落ち着いた雰囲気の宿屋であった。

 既に入り口は施錠されていたので、ヒヅキは周囲を確認しながら裏手に回る。

(うん?)

 宿屋の裏にある部屋から、薄っすらと明かりが漏れているのを目にしたヒヅキは、そっと近づき中の様子を窺う。

(誰か起きているのか……)

 近づくと、扉越しなので音量は小さいが、機嫌よく鼻歌を歌っているのが微かに聞こえてきた。

(……あそこから覗いてみるか)

 ヒヅキは、明かりが漏れている、天井付近に設けられた小さな換気口から中の様子を窺う。

(料理の支度の最中か?)

 室内では、恰幅のいい中年の男性が何かを切っているところであった。周囲には大きな鍋や立派な竈も確認出来るので、どうやらここは台所らしい。

 覗くのを止めたヒヅキは、何処か開いていないか台所周辺を確認するも、物置のような小屋が一つ隣接しているだけで、入れそうな場所は確認出来ない。ヒヅキはもう一度何処か入れるところがないか、宿屋を1周する。

 しかし、今回は何も壊さずに侵入できそうにはない。

(しょうがないか)

 諦めたヒヅキが、何処かの窓でも壊すかと考えた時、裏手の戸が開き、中から料理をしていた男性が出てくる。手には大きなごみ入れを持っていた。

 男性は隣接する小屋の鍵を開けると、手にしているごみ入れごと小屋の中に入っていく。ヒヅキはその隙に、開いた扉から台所に入る事に成功した。

 台所に入ると、そこから表に出て、標的が泊まっている部屋の前まで移動する。

(さて、あと少しだ)

 そう自分に言い聞かせると、ヒヅキは残りの標的を始末していく。

 残っていた標的の冒険者を片づけたヒヅキは、宿屋の外に出て、最後に残った女性の気配の方へと向かう。

(結局、プリスさんの屋敷から動く事はなかったか)

 それを残念に思うも、今夜の内に一気に終わらせたいヒヅキは、諦めてプリスの屋敷を目指す。

 その道中に見上げた空は、少し色が薄くなってきていたが、特に気にする事なく歩みを進める。出ていくのであれば、そちらの方が好都合なのだから。

 しかし、そんな思いも空しく、ヒヅキがプリスの屋敷に到着しても、女性はそのままであった。

(さて、どう侵入するべきか)

 今までの宿屋と違い、プリスの屋敷への侵入は骨が折れるものである為に、どうしたものかと思案する。都合よく、うっかり窓への施錠を忘れているようなことは起きないだろうから。

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