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斜陽34

 シロッカス邸で朝食を摂ったヒヅキは、シロッカスとアイリスと雑談を交わした後、昼前にはシロッカス邸を後にしていた。

「さて、次へと向かおうかな」

 一度伸びをしたヒヅキは、ガーデンの南門へ向けて移動を始める。

(殿下の元には……顔を出した方がいいのだろうか?)

 少し前にエインの親兄弟を手に掛けたばかりである為に、ヒヅキはどうするべきか思案する。

(話をした方がいいのか、今回は止めておいた方がいいのか……)

 どちらにすべきか考えながらも、ガーデンを南下していく。

(とはいえ、殿下は王宮だろうし、訪ねるとしたらプリスさんの方か)

 足を止めたヒヅキは、考え直して、向かう先を変更する。

(居るとは思えないが、訪ねたという事実は残るか)

 そのままプリスの家まで移動すると、戸を叩いて来訪を告げる。

 しばらく待っても応答がないので、ヒヅキは諦める事にした。

 屋内に誰か居るかは気配を探れば判るが、流石にそんな事までしたりはしない。

 踵を返して、当初の目的地である南門の方へと足を向けるが、その道中、見知らぬ女性から声を掛けられた。

 何事かと思いつつ話を聞くと、プリスの使いの者だと聞かされる。

「…………なるほど」

 それに頷きつつ、ヒヅキは素早く女性を観察する。

 女性はガーデンの住人と同じ様な装いの為に、外観からは判断が難しい。装身具の類いは付けてはいない。

 そんな相手ではあったが、少々変わった足の運び方をしていたので、何かしらの特殊な訓練を施された者の様であった。

 怪しい事に変わりはないものの、その足の運び方はプリスのものに似ていたので、ヒヅキは警戒しつつも、とりあえずついて行ってみる事にする。

 ヒヅキが怪しい女性について行くと、道中で似たように怪しい女性とすれ違いざまに目配せしているようであったので、その通り過ぎた女性の気配を追ってみる事にした。

「…………」

 そうしながらも、プリスと似ている以外に何処かで似た動きに覚えがある気がしたヒヅキは、何処だったかと記憶を探っていく。

(……ああ)

 しばらくそうして記憶を探っていると、はたと思い出す。それは、ヒヅキが南門でスキアの大群相手に孤軍奮闘した後に回復している最中、周囲を動き回っていた者達の動きに似ているのだった。

(あれは確か殿下の手の者だったか)

 そんな話をエインとしたことを思い出したヒヅキは、前を歩く女性へと目を向ける。

(という事は、この女性も……まだ可能性の一つでしかないか)

 とそこで、気配を追っていた女性の動きが止まる。どうやら誰かと会っているようで、近くに何者かの気配があった。

(この探知能力も、遺跡に赴いてから精度が上がったな)

 以前よりも生者の気配に敏感になった上に、一度捕捉した存在への判別も、より明確に行えるようになっていた。

(それでも、ウィンディーネの足元にも及ばないんだがな)

 神を自称するだけあり、ウィンディーネのそれは別格であった。少なくとも、ヒヅキのものより数倍は性能がいい。

(やはり上には上が居るな。努力だけでは埋められぬ才能か)

 人間と神を比べる時点で間違っていると思いつつも、ヒヅキはつい、そんな事を考えてしまう。

(……動き出したか)

 気配を追っていた女性と、その女性に接触していた人物の二つを追いながらも、ヒヅキは目の前の女性に問い掛ける。

「大分歩いていますが、何処に向かっているのでしょうか?」

「申し訳ありません。もう少しお付き合いください」

 しかし、上半身で振り返った女性は、そう言って少し頭を下げただけで答えはしない。

「そうですか」

 そこに明確な壁を感じたヒヅキは、それ以上追求することを止める。

(どうせ、もうすぐ判る事だ)

 女性の案内がもうすぐ終わるかどうかは不明ではあったが、気配を追っている人物達の方は目的地が目前なのか、少し移動速度を上げると、少し先に在る建物を目指しているように思えた。

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