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斜陽33

 書斎に通されたヒヅキを、シロッカスは快く迎えてくれる。

 シロッカスの勧めるままに、書斎に置かれていたソファーに腰掛けたヒヅキは、シンビが用意してくれたお茶で唇を湿らす。

「それで、南の様子はどうだった?」

 そのシロッカスの問いに、ヒヅキは見てきた事と、軍を殲滅してきた事を伝えた。

「なるほど。約一日で殲滅までするとは、流石はヒヅキ君だね……とりあえずこれで危機は脱したが、これからどう転ぶのか」

 シロッカスは目を閉じると、思案の姿勢に入る。

 政策などにはあまり関与していなかったとはいえ、現王に近しい王族が二人も殺されたというのは、それだけ大きな問題であった、それがたとえ争いの末の結末であろうと。それに、まだ開戦したといえるかは微妙な時であった。

「まぁ幸いと言っていいのか、ヒヅキ君のことはあまり世間に知られていないから、その辺りでどうにかできるだろうが……」

 思案しながらぶつぶつと呟くシロッカスに、ヒヅキは当初の予定通りに、直ぐにカーディニア王国を出てエルフの国に行くことを伝える。

「そうか。そうなると、また当分は会えなくなってしまうな」

「はい」

 残念そうなシロッカスに、ヒヅキは少し申し訳なさそうに頷いた。

「出立はいつにするんだい?」

「今日にでも、と」

「それはまた急な話だね」

 ヒヅキの返答に、シロッカスは困ったように頬をかく。

「せめて今日ぐらいは我が家に泊まっていかないかい?」

 シロッカスの提案に、ヒヅキは小さく首を横に振る。

「遺跡調査に思いの外時間が掛かってしまいましたので、直ぐにエルフの国に向かいたく」

 ヒヅキはそう理由を述べるも、早く出ていきたい最も大きな理由は、周囲の何処かに居るはずのウィンディーネの存在であった。

「そうか……では、せめて最後にアイリスにも会っていってはくれないか? 朝食の支度も済ませてあるので、それも食べていってほしい」

「分かりました。では、お言葉に甘えさせて頂きます」

 そのシロッカスの提案に、ヒヅキは感謝を込めて頭を下げる。

「それは良かった。では、朝食の準備が整うまでの間、もう少し何か話をしようではないか」

 二人は朝食が出来るまでの間、色々な話を交わしていく。





「なるほど。また計ったかのように現れたものだ」

 王宮の執務室で、プリスからの報告を受けたエインは、呆れたようにそう口にする。しかし、口元は僅かにほころんでいた。

「そして、無様なものだな」

 そう言ってエインが視線を向けた先では、二つの首が置かれていた。

「後片付けは済ませたのか?」

「現在行っている最中かと」

「まぁそれなりに数が居たみたいだからな。とりあえず、王に書状でも出しておくか。それらは罪人として晒してもいいが、王に送り返してもいいな」

 エインは頬に指を当て、少し思案する。

「これらがしでかした事を考えれば、晒すべきだが……王の元に返すのも、正直面倒だな。……しょうがない、こちらで秘密裏に埋葬だけして、死んだことを王に伝えるか。甚だ遺憾ではあるが、今は公表を控え、後日病気か何かで死んでもらうとしよう……幸い、元々そう公表していたしな。はぁ。王家の威信なぞどうでもいいが、王家が絶対的ではない以上、これ以上の失墜も考えものだしな。ま、この辺りは王へと丸投げするか」

 エインは疲れた息を吐き出した。

「それが済んで王が帰ってくれば、私は外に出るかな……直ぐにはいかないだろうが。それで、彼は今どこに?」

「現在探している最中です」

「そうか。その王妃が関与していたという、コズスィの話を訊きたいのだがな」

 エインは手元の資料を一枚手にすると、それへと目を向ける。

「全く。中々にしぶといものだ」

 もう一度資料に書かれている文字を目で追ったエインは、呆れたようにそう口にしたのだった。

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