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斜陽17

「色々探っていた冒険者達も、少し落ち着いたようだね」

「はい」

 昼食の少し前。仕事に早めに区切りがついたシロッカスは、いつもより早くに食堂へと来ていた。

「それで、冒険者の諸君は一体何について熱心に調べていたんだい?」

「主にスキアとそれを撃退した忠義の騎士について。他にはエイン殿下やその周辺、それとガーデンの現状や周辺の状況についてでした」

「また色々と調べたものだ。……ただの現状の確認ならばいいのだがな」

「他の可能性が?」

「敵の情報を知るのは基本だろう?」

「……そうで御座いますね」

 深刻そうな表情のシンビへと目を向けたシロッカスは、軽く肩を竦める。

「ま、そう深刻に捉える必要もないさ。引き続き情報の収集に努める必要はあるだろうがな」

「はい」

 シロッカスの言葉にシンビが頷いたところで、アイリスが使用人と共に食堂へ入ってくる。

「あら、今日は御父様が先にいらしていたのですね」

 シロッカスの姿を認めたアイリスは、少し驚いたような表情を浮かべた。

「はは。今日は珍しく早めに仕事が終わってね」

 そんなアイリスに、シロッカスは優しく微笑みながらそう返す。

 シンビはシロッカスとアイリスに頭を下げると、残りを他の使用人に任せて、台所へと向かった。

 使用人が引いた椅子に慣れた様子で腰掛けたアイリスと一緒に、シロッカスは食事が運ばれてくるまで歓談を続ける。

 程なくして運ばれてきた食事を食べ終えた二人が軽く言葉を交わしていると、食器を片す為に下がっていたシンビが慌てた様子で戻ってきて、シロッカスの耳元で何事かを伝えた。

「なるほど。動きが早かったな」

「何かあったのですか?」

 深刻な声を出したシロッカスに、アイリスが緊張した面持ちで問い掛ける。

「……どうやら、ソヴァルシオンから軍隊がやってくるらしい」

「何の為にでしょうか?」

 硬い表情のまま質問を重ねるアイリスに、シロッカスは疲れたように首を振った。

「ここを、ガーデンを攻めるためさ」

「な、何故ですか!?」

「どうやら王妃様は、どうしてもエイン殿下を排除したいらしいな」

 息を呑むアイリスから目を離したシロッカスは、シンビに顔を向ける。

「それで、誰の旗が翻っていたか分かるか?」

「王妃様と第二王子殿下のものだけです」

 シンビの言葉に、シロッカスは「ふむ」 と、何事か考えると。

「どうやら国王はそこまで愚かではなかったらしい」

「どういう事でしょうか?」

「国王の旗がないという事は、それに弓を引いても反逆とまでには至らないという事だ」

「そういう事ですか」

「王妃様の軍の内容は判るか?」

「ソヴァルシオンの兵士以外には、冒険者と思しき一団が確認されております」

「ふむ。最近の冒険者と王室の関係を鑑みるに、ギルドに所属している冒険者とは思えんから……傭兵か。少し前にガーデンに来ていたのは、主にそこの冒険者だろうな」

 そこでシロッカスは困ったように小さく唸る。

「ガーデンにはあまり冒険者が居ない。これは、少々危ういかもしれないな」

 スキアよりは冒険者が相手の方がマシではあるが、それでも普通の兵士よりは強い相手だ。しかし、まだ戦い方によっては勝機が見出せる分、スキア相手よりは救いがある。

「これからどうなるのでしょうか?」

「エイン殿下次第だが、国王不在であれば、ただの降伏はありえないだろう。あったとしても、降伏しておいての逃亡ぐらいか」

「旦那様とお嬢様は如何なさいますか?」

 シンビの問いに、シロッカスは難しい顔で思案する。

「逃げるにしても、現状の国内でそれなりに機能しているのは、ソヴァルシオンだけだろう。軍がこちらに来ている以上、遠回りせねばなるまい。その場合は護衛だが……今は冒険者も不在だしな」

「ヒヅキさんがいらっしゃればよかったのですが」

 アイリスの言葉に、シロッカスは「そうだね」 と頷く。

「彼が居た場合だと、そもそも居を移す必要もなかったかもしれないがね。たとえ冒険者でも、彼には勝てないだろうから」

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