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斜陽3

「戦う事は私も反対です。それよりも先に、現在の正確なガーデンの状況を知る必要があるかと」

 国王に話を振られた第一王子は、しっかりとした声音でそう応えた。

「そうだな。本当にスキアが去ったのか、ガーデンの被害状況に、民衆や王宮の様子など、調べることは山ほどある」

「しかし――」

「まずは知る事から始めなければならぬだろう。今のガーデンの状況については、噂程度の情報しかないのだから」

「……分かりました。では、折角雇った冒険者です。まだどんな危険があるか分かりませんので、それを情報収集の任に当てても宜しいでしょうか?」

「……よかろう。冒険者を使い、情報を収集せよ」

「承知致しました」

 優雅に一礼すると、王妃はにこやかに微笑む。

「では、早速命令してこようと思うのですが、席を外してもよろしいでしょうか? 情報収集は早い方が宜しいでしょうから」

「そうだな」

 国王が頷くと、王妃は国王に一礼して、部屋を出ていく。そんな王妃の姿を、国王は静かに見送りながらも、

(こちらでも独自に情報収集を行わなければな)

 と、内心でそう思うのだった。





(王の動きにも注視せねばならないが、まずは情報収集。情報を一度私に集めてから、そちらは調整すればいい)

 隅々まで掃除の行き届いている廊下を歩きながら、王妃は頭の中で今後の予定を組み立てていく。

(しかし、スキアを退けた? 一体どうやって? 何の為に手間をかけてまでガーデンから冒険者を去らせたと思っているのか!)

 王妃は心の中で第三王女をそしりながらも、まだ勝機がある事を確信する。

(まぁいい。それよりも旗を、何としても国王の旗を手に入れなければならない)

 もしも国王の旗を掲げてガーデンへと攻め入ることが出来たならば、それで王妃の勝ちは決まる。自国の王の旗に弓引く意味は明白で、たとえエインが反撃してきても、その時は反逆者として扱えるようになるだけだ。

(兵は揃えた。武器も十分調達している。食料などの物資も十分。時期も悪くはないはず。後は事をどうやって上手く運ぶか、だ。全く、あの賢しい小娘はいつも手間をかけさせてくれる)

 内に黒いもので満たしながらも、王妃は廊下を進み、手駒の一部を置いている部屋まで移動する。

「王よりの勅命である!」

 王妃が部屋へ入るなり、そこに居た者達へとそう声を掛けると。

「とうとう戦争ですかい?」

 一人の男がそう声を上げる。見た目は清潔感があるが、口調や表情には品が無い男であった。

「いや、まだだ。まずはガーデンの情報収集からだ」

「情報収集? まだ情報が足りやせんで?」

 男は王妃の話に、怪訝な表情を浮かべる。既に色々と収集した情報を王妃へと渡していたが、まだ足りないのかという表情であった。

「足りない? 肝心のどうやってスキアを倒したかまでが分からないではないか。光がスキアを滅ぼした? そんなもの情報ではなく単なる噂だ!」

「そうは仰いやすが、ガーデンで直接集めた情報ですぜ?」

「ならもう一度赴け。今度は現在のガーデンの様子を、被害状況・復興の進み具合・民衆の様子・王宮の、あの女の状況も忘れずに調べてこい」

「分かりやした」

「それともう一度言うが、どうやってスキアを倒したのかも、もう一度調べてこい!」

「……へい、分かりやした」

「では行ってこい!」

 王妃がそう冷たく言い放つと、男は仲間を引き連れて部屋を出ていった。

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