遺跡調査67
通路を下っていく。といっても階段をではあるが、屈みながら階段を下りるのは少し苦労した。
苦労しながらも何とか階下に辿り着くと、そこはとても広い空間が広がっていたのだが、暗い為にどこまで続いているのかは不明であった。
「ここは……? 急に寒く」
急に冷えてきたヒヅキは、思わずぶるりと身を震わせる。
「ここは食料の貯蔵庫ね。他にも色々と置いていたようだけれど、食料が大半。それよりも、そろそろ出た方がいいわよ? ここは上よりさらに冷えてるから。それにここまで寒いと、私の気休め程度の魔法では、いつまでも保つモノではないわよ」
「……そう、ですか。それならばしょうがないですね」
ウィンディーネの言葉に、ヒヅキは残念そうに首を振ると、下りたばかりの階段を上っていく。
「上階も少しだけ確認しておきたいが……」
階段を上り終わると、更に上へと続く階段を見上げてヒヅキが呟く。
「帰りもあるのだから、よしておいた方がいいわよ? 上の階はまだ3階もあるし、住居用が大半よ」
それにウィンディーネが横からそう声を掛ける。
「…………知っているので?」
「これぐらいは簡単よ?」
「そう、なんですか? 凄いですね」
「そんな事はないわよ。私では構造を把握するのと、何かが居るかどうかぐらいしか分からないもの」
「十分凄いと思いますが」
「私が知る限り、構造どころか、そこに何が在って誰が居るかまで細かく把握出来る存在も居たから、私程度ではたいしたことないのよね」
「…………」
「ああ、私も知っている相手ぐらいなら一応把握できるわよ? ぼんやりだけれど」
「私では、ウィンディーネにさえ遠く及びませんよ」
「ふふ。まぁ私は長く存在しているから、そのせいかもね」
微笑むウィンディーネを見たヒヅキは、最初に入ってきた部屋に戻っていく。
「本当に、ウィンディーネと一緒だと、つくづく自分の矮小さを思い知らされますよ」
疲れたようにそう呟くと、ヒヅキは穴から外に跳び出る。
元々力を持っていなかったヒヅキにとって、ウィンディーネとの格の違いは、すんなり受け入れられるモノではあったが、 それでも、少し思うところはある。自衛という意味でも、このままウィンディーネの後塵を拝してばかりもいられない。
(何か、光の剣や魔砲以外の使用方法はないだろうか? 魔砲があるから、新しい力は集団ではなく個人向けの方がいい。光の剣が接近戦なので、出来れば遠距離の攻撃が理想か。それに魔力関係も考えないといけないな)
ヒヅキはウィンディーネと敵対するつもりはないものの、それでも歩みは進めておこうと、着地するまでの僅かな間に決意するのであった。