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旅立ちの前に

 その後、赤髪の男性ことリイドと改めて挨拶や自己紹介を交わしたあとに、六人は少し遅い昼食を摂るべく、宿屋近くにある食事処に移動した。

 そこは大衆酒場のような猥雑な雰囲気のある店ではなく、小綺麗で少し高級感のある飯屋だった。

店に漂うそんな雰囲気に、なんとなくではあるが、ヒヅキは自分が場違いな場所に紛れ込んだ異物であるかのような落ち着かなさを覚えるが、ヒヅキ以外の五人は慣れているようで、普段着のままでも平然としていた。

「何を食べようかなっと」

 そんなヒヅキとは対照的に、リイドは今にも鼻歌でも歌いそうな気軽さでメニューを眺めている。

「ルルラは何を食べるか決めたのかい?」

「ええ、私はこの前食べた料理が美味しかったので、前のと同じにしようかと」

 ガザンとルルラは二人で会話をしていた。先ほど宿屋からこの飯屋に移動する途中の話に出たのだが、ルルラとガザンは婚約者同士という話だった。

「ルリはどうする?」

 サーラからメニューを渡されたルリは、「ん」と子どものように小さな指で一品の料理を指し示す。

「それでいいんだな。ならワタシは………あっ、ヒヅキさんはどうする?」

 サーラはルリからヒヅキの方へとメニューを差し出す。

 ヒヅキはメニューに視線を落とすも、そのほとんどが知識としては知っているだけで、今まで無縁だった小洒落こじゃれた料理ばかりであった。

「えっと、それじゃ………このサラダで」

 ヒヅキはその中から馴染みのある野菜とキノコのサラダに決める。

「それだけでいいの?」

 その問いにヒヅキがコクリと頷くと、サーラは驚いたように目を丸くした。

「それだけで足りるの?」

「ええ、大丈夫です」

「そうなんだ……」

 サーラはどこか納得いかないような相づちを打つと、自分もメニューに視線を落とした。


 その後、店員さんに注文をすると、昼時を過ぎていたからかそう待たされることなく注文した全ての料理が運ばれてきた。

 それぞれの席の前に料理が並ぶと、ヒヅキたちはひとまず食事を摂ることにした。


 食事を終えると、今後の予定のすり合わせを行う。

 まず出発だが、現在が昼過ぎということもあり、明日の朝にしてはどうかという意見が出たが、結局はこの話し合いが終わったらすぐに、ということになった。

 その後はチーカイの町から地図上ではほぼ真上、つまりは北にあるソヴァルシオンへ道なりに約6日を掛けて歩いて移動することになるが、これは冒険者という一般人よりも遥かに身体能力に優れている者たちだから可能な早さであった。本来であれば、徒歩ではその倍の日数があってもたどり着けない道のりである。

 ソヴァルシオンに着いたら最初にギルド本部へと行き報酬を受け取り、その後、五人は所属するギルドであるソレイユラルムに戻るという流れになるらしかった。ヒヅキはと言うと、ギルド本部までは五人に同行するが、そこで五人とは別れるつもりだったし、それは事前に五人に伝えていた。

 色々と言葉を交わしたが、要約するとそういう話であった。

 ヒヅキたち六人は飯屋を出ると、宿屋に荷物を取りに戻り、宿屋を後にした。

 そしてチーカイの町の門をくぐり外に出ると、街道を北へと進みだしたのだった。

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