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遺跡調査45

 ウィンディーネに身体と荷物を乾かしてもらうと、ヒヅキは先に進む為に先程の部屋へと戻った。

「早く行きましょう」

 そう促されるも、続いている道が左右2つある為に、ヒヅキは一度立ち止まり考える。

「もう! 右よ!」

 そんなヒヅキにじれったそうにそう言うと、ウィンディーネは立ち止まっていたヒヅキの背を押して進む。

「こちらの通路ですか?」

 ウィンディーネに背を押されるがままに、ヒヅキは右の通路へと歩みを進める。

 通路に出てしばらく進むと、ウィンディーネはヒヅキの背から手を離した。

「全く、生き物というものは臭うのが難点ね」

 ヒヅキは背後から聞こえてくるウィンディーネの独り言めいた愚痴を聞き流して、先へと進む。

「ああでも、普段のヒヅキのにおいは、中々に私好みの匂いよ」

 そんな訊いてもいない事を言われ、ヒヅキはどう反応を返せばいいのかと困るも、とりあえず適当に礼でも言っておく事にした。

「それは光栄ですね」

「ふふ。そうね。本当にヒヅキは私を退屈させないわ」

 興味を削げないかと考えているのに逆の結果ばかりが出てしまっていることに、ヒヅキは前を向いたまま小さく苦笑する。

 そのまま何も無い通路を真っすぐ進むと、薄っすらと明かりが照らしている部屋に出た。

「明かり? どこから?」

 ヒヅキが目を向けると、内側からの淡い光でその姿を浮かび上がらせている半透明な石と、氷のように透き通り、半透明な方よりも強い光を発している石が天井からぶら下がっている。それだけではなく、地面にも光る石が幾本も伸びているのが確認出来る。

「……これが光石?」

 初めて見るその光景に、ヒヅキは思わず考えが口を衝いて出ていた。

「ええ、光石ね。だけれど、これほど成長した光石は珍しいわね」

 ヒヅキの言葉をウィンディーネは肯定する。

「採掘される前はこうなっているんですね」

「あら、光石を見るのは初めて?」

「はい。ランタンなどに使われているような、加工された光石は目にした事が在りますが、自然の光石はこれが初めてです」

「そう。初めてでこれほどの光石が見られるとは、ヒヅキは運がいいわね」

「そうですね」

 光石が貴重品なのはヒヅキも知っていたので、それには同意する。それにしても、暗闇に浮かび上がる光石というのは、幻想的な光景であった。

「それにしても、透明な石と半透明な石があるんですね」

「半透明な方は、苔()しているのよ」

「苔ですか?」

「ええ。光を食べる苔。だけれど、太陽光では強すぎて育たない変わった苔よ」

「光を食べる、ですか」

「食べると言っても、石を齧ってる訳ではないわよ?」

「それは分かりますが」

「苔が光を吸収する代わりに、苔が石を保護しているのよ」

「へぇ」

「あの苔、結構丈夫なのよ」

「そうなんですね」

 ウィンディーネの話に感心しながら耳を傾けていたヒヅキではあったが、本来の目的を思い出し周囲に目を向ける。

「……あそこに階段らしきものがありますね」

 ヒヅキが指差した先に目を向けたウィンディーネは、「そうね」 と軽く頷いた。

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