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遺跡調査42

 手始めにヒヅキは死体の様子を調べてみることにする。

 見渡した範囲に倒れている死体は全部で八つ。全員フードを被り、身体をローブで包んでいる。その姿は、前に襲撃してきた獣人と同じであった。

 中にはフードが外れ顔が見えている者が二人確認出来るが、どちらも人間のように顔の横ではなく、頭頂近くに三角形の耳が付いていた。

「ここにも獣人、ねぇ」

 そう呟きながら、ヒヅキは近くの死体の傍に屈み、その死体の顔を確認する。

「種類というか種族が違うが、これも獣人か」

 その頭についた耳は縦に長く、よくフードに大人しく収まっていたなと少し感心しつつも、他に何かないかとローブの前を(はだ)けて中を探っていく。

「……ふむ。これは」

 そこで目に入った、獣人の腹部に残る綺麗な切断面に、ヒヅキは興味深げな目を向ける。

 獣人という種族は身体能力が高く、一般的に身体能力は、人間の大人と獣人の子どもがほぼ同じぐらいだと言われている。

 そんな身体能力の高い獣人に見事な一閃を決められるのは、余程の手練れということになる。もしくは同族か、獣人以上に身体能力の高い種族か。

 前にヒヅキが獣人を圧倒出来たのは、元々昔から身体を鍛えていたのもあるが、それ以上に身体能力強化を使用していたからであった。それも長年研鑽を積んだ、ヒヅキの最も得意としている魔法による成果。

「この獣人達を倒したのは何者なのか。そして、何処に行ったのか」

「状況を見れば、これらを倒してそのまま遺跡の中へと入っていったか、もしくは遺跡の中から出てきたところで遭遇もしくは襲撃された、といったところかしら?」

「おそらくは。しかし、前者であれば、場合によっては厄介ですね」

「そうね。これからヒヅキも遺跡の中に入っていくのだものね」

「ええ。この獣人達が死んで少しは時間が経っているので、出来れば何処かに行っていてほしいところですが」

「それは、遺跡の広さによるわね」

「そうですね」

 ウィンディーネの意見に頷きながらも、ヒヅキは他の死体も検分していく。

 どうやら死体は全て獣人で、おそらく全員若い。性別はどちらも居たが、前に撃退した獣人の襲撃者のように何かを隠し持っているという事はなかった。

「それにしても、武器の類いがほとんど無いですね。やはり基本は爪や牙なんですかね」

 獣人は武器類が嫌いという訳ではないが、爪や牙は鉄製の武器にも匹敵すると言われているので、戦場でも剣や槍よりも爪や牙で戦う姿が度々目撃されている。特に爪は自由に伸縮出来る為に、暗殺や奇襲の類いには向いていた。

 その辺りの理由から、獣人は平時でも街の出入りなどが警戒されるのだが、それも納得だった。権力者からは特に恐れられていそうだが、同時に需要もそれなりにあることだろう。

「まぁ軽装なのはその方が都合がいいとしましても……」

 ヒヅキは一人の獣人が持っていた物を手に取る。

「また珍しいものを」

 それはかつてヒヅキがエインに渡した身代わり人形に似たお守りであった。

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