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遺跡調査41

 腹ごしらえを終えたヒヅキは水筒から水を飲むと、それを仕舞って空を見上げる。木々の合間から僅かに見える空は、茜色に染まっていた。

「…………」

 それを確認したヒヅキは、防水布の上で身体を丸めて横になる。

「あら、寝るの?」

「はい。少し寝ます」

「そう。なら見張りは任せて、ゆっくり寝るといいわ」

「ありがとうございます」

 ウィンディーネの申し出に礼を言うと、ヒヅキは浅い眠りに入る。

「ふふ。あれだけ色々な事があったのだもの。流石の貴方も疲れたでしょう……」

 ヒヅキの寝顔を見ながら囁くような声音で呟くと、ウィンディーネは小さく首を横に振った。

「いえ、普通なら生きているだけで奇跡の偉業ね。なのに、私を背負い、更にはここまで自力で歩いてきたのだから大したものだわ。本当に、興味深いわね」

 そう言うと、ウィンディーネは妖しい笑みを浮かべる。もしもその顔をヒヅキが目撃したならば、確実に引いたような嫌な顔を浮かべた事だろう。

 ヒヅキは目を覚ますと、周囲に目を向ける。余程疲弊していたのだろう、すっかり深く眠っていたようで、気づけば朝になっていた。その普段は絶対に犯さない失態に、ヒヅキは内心で苦い顔をするも、それを表には出さずに、近くに居る人物へと顔を向ける。

「おはようございます。見張りありがとうございます」

 寝る前と同じ体勢のままのウィンディーネに、ヒヅキは朝の挨拶と礼を告げる。

「おはよう。構わないわよ、ヒヅキの可愛い寝顔を堪能できたのだもの」

 からかうようなウィンディーネの物言いに、ヒヅキは舌打ちしそうになるのを堪えて、内心で自らの愚に顔を歪めた。

 それから立ち上がり防水布を仕舞って背嚢を背負うと、山を下りる。十分に休養を取ったので、ヒヅキの足取りは軽かった。

 下山すると、次の目的の遺跡へと足を向ける。

 これで東側の遺跡の調査を終えると、プリスから聞いた遺跡は西側の遺跡のみとなる。その東側最後の遺跡へは、下山してから二日かかった。

「……ふむ。これは酷いな」

 崖の中に造られていたその遺跡の入り口に到着したヒヅキは、そこに広がっている惨状に、そう小さく呟く。

 そこには、遺跡の入り口付近に横たわる幾つもの死体と鉄のにおいが広がっていた。それも死体の状態と死臭が少ない事から推察するに、そこまで古いものではないように思えた。

「ここの遺跡は人気なのね」

 そんな惨状を目にして、ヒヅキの隣でウィンディーネがのんきにそんな感想を呟く。

「とりあえず、どこから調べたものか」

 ヒヅキはそんなウィンディーネを無視しつつ、現状把握の為に何処から調べようかと、疲れたように思案を始めた。

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