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遺跡調査34

 闇の中から現れた魔物は、元は狼か何かだったのだろう、腰丈程の体高で四足歩行のそれは、全長が少し長く2メートルぐらいあるように思えた。

 全身が瀝青(れきせい)よりも黒く、それでいて鮮血を濃縮したような真っ赤な小石のような物が所々に埋まっている。その赤い石が光を反射させる様子は、不吉さがありながらも目を惹きつけるものがあり、(まさ)しく魅惑的としか表現しようがなかった。

「グルウゥゥゥッ」

 その魔物が地の底から響くような低い唸り声を上げると、目の部分に灯る冷たい印象を受ける奇妙な赤い光でヒヅキ達を見据えてくる。

「魔物とは、また妙な気配の存在なんですね」

 一定の距離を保ちながらも、ヒヅキは光の剣を下段に緩く構えながら、魔物と正対するように横に移動する。

「穢れの影響を受けた存在ですもの」

「ウィンディーネも堕ちればああなるので?」

「そうね、こんなに可愛くはないと思うわよ?」

 蠱惑的な響きを乗せたウィンディーネの言葉を聞きながらも、ヒヅキの目は魔物を捉え続けている。

「それは困りますね」

 ヒヅキと魔物は互いの間合いを計りながらも、じわりじわりと距離を縮めていく。

「ふふ。だから、精々私を退屈させない事ね。活力が湧いている内は、そうそう堕ちたりはしないから」

「……善処しますよ」

 少し疲れ気味にそう返すと、魔物の観察を終えたヒヅキは地を蹴り、10メートルほどまで縮まっていた魔物との距離を一足飛びに詰める。

「ハッ!」

 スキアに対してよくやっていたように、光の剣を横向きに魔物の正面に当てると、一気に駆け抜けて魔物を横開きにしてしまう。

「……ふむ。こんなものなのか?」

 横に割かれた魔物は、黒っぽい霧ような細かな血を噴出させてその場に倒れた。

「単にヒヅキがその魔物よりも強過ぎるだけよ。普通はそれ一匹で、町一つが容易く滅びかねないのよ?」

 ヒヅキの呟きに、ウィンディーネはどこか呆れたようにそう説明する。

「こんな魔物一匹で?」

「ええ。まぁ冒険者? が複数人居れば、これ一匹では厳しいでしょうけれども」

「そうなんですか」

 ヒヅキがいまいち実感なくそう返すと、倒れていた魔物が溶けていくようにして消えてしまった。そこには石が吸った染みだけが僅かに残っている。

「この魔物は穢れの進行が緩やかだった様ね」

「? どういう事で?」

「穢れた者の死体は遺らないのよ」

「そうですね……?」

「穢れが進むとね、死んだ瞬間に消滅するのよ」

「消滅……それはスキアのようにですか?」

「近いものがあるわね。あれも結局は神の仕業だもの」

「…………神、ですか」

「ええ、そうよ。興味ある? ヒヅキのそれにも、神が関わっていそうだしね」

「え?」

 ウィンディーネはヒヅキを指差すと、どこか挑戦的な笑みをその顔ばせに浮かばせた。

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