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遺跡調査30

 しばらくそうして思案したウィンディーネは、考えがまとまったのか、おもむろに口を開いた。

「前にも話したけれど、私は神とも呼ばれる事があるのよ。そんな私と同じ存在は神性という特性のような力を持っているのだけれども、それが穢れると、“墜ちた”状態になってしまうの。そうすると、周囲に害を、貴方達が祟りと呼ぶものをまき散らす存在になるのよ」

「そうなるとどうなるので?」

「さっきも言った飢饉や干ばつ、伝染病などの死に至る異変が周囲一帯に広がるのよ」

「それはどうやれば治るので?」

「影響が及ぶ全ての生き物が死に絶えれば収まるわよ。私達は生命を頂く事で存在を維持出来ているのだもの」

「…………」

「だからこそ、上の壁画に在ったような生贄が行われたりするのよ」

「え?」

「祟りは人の力ではどうにもならない。しかし、それでもどうにかしようと生贄を捧げるのよ」

「…………」

「人は神が怒っているから祟りになると考え、怒りを鎮めようと生贄を捧げる。でも、意味ないのよね。命が目的ならば既に大量に奪っている訳だし。中には無垢な存在、代表的なのは赤ちゃんかしら? の命も奪ってる訳なのだから」

「……まぁそうですね」

「それに、原因は怒りではなく神性の喪失。穢れた事が原因である以上、そこに感情は介在していないわ」

「その穢れとは何なんですか?」

「ヒヅキはこの世界に神が居ると言ったら、信じる?」

「ウィンディーネではなく?」

「ええ。私のようなそう呼ばれる存在ではなく、そう呼ばれなくともそのような存在の事よ。つまりはこの世界を創った存在」

「居る……のでは?」

 前のヒヅキであれば否定しただろうが、ウィンディーネという格の違う存在を目の前にしては、それも否定しづらくなっていた。

「ええ、居るわ。そして穢れとは、その神の悪意よ」

「神の悪意?」

「そう。まぁ何と言えばいいのかしら、この創造神ってのがまた変わっていてね、わざわざ穢れを創ったのよ」

「何の為にですか?」

「私にも真意は分からないわ。でも穢れは存在する。それだけよ」

「なるほど……それで、生命を頂く、とは?」

「ん?」

「存在の維持の為には生命を頂くと」

「ああ、それね。ヒヅキは、なんで貴方達に寿命が在るか知っている?」

「……いえ」

「本来貴方達には寿命は存在しないのよ。そもそも、生者には生命源のようなモノがあってね、それは生きているだけで減っていくものなの。そして、それが枯渇すると死に至る。これが寿命の正体」

「…………」

 ウィンディーネの説明に、ヒヅキは静かに頷く。

「でもね、これは自然に回復していくのよ。それも減った分が全て」

「それが寿命が無いという事ですか?」

「そう。だけれども、その補充分の一部に相当するぐらいを私達が頂いているの。そうすると――」

「その生命源がいつか枯渇する」

「ええ。だから生けるものには寿命が在るの」

「それはどれぐらい持っていくので?」

「私達にも個人差があるのよ。大食いも居れば小食も居るように」

「……なるほど。それで、ウィンディーネ達は何をしているので?」

「ふふ。ヒヅキのそういうところが面白くて好きよ」

「?」

「そうね。例えば、貴方達が子孫を残せるようにする手助けしているとか、木に実りをつけるとか、空気や水をを綺麗にするとか様々だけれども、やはり一番は穢れを浄化する、かしら」

「浄化できるので?」

「ええ。それには膨大な生命の力が必要なのよ」

「膨大な……」

「もしも私達が生命の力を取り込まないで浄化を行えば、穢れの一つか二つで私達は消滅してしまうわね」

「……なるほど」

「とにかく、穢れには近づかないことね。神性の無い者が触れると、問答無用で終わってしまうわよ」

「……そうします」

 ウィンディーネの言葉に頷くと、ヒヅキはその水から距離を取る。

「ヒヅキに跳ねた飛沫はちゃんと防いでおいたわよ」

「…………お手間をお掛けしました」

「ふふ、いいのよ。私はまだまだヒヅキを観ていたいのだもの」

 そう言うと、ウィンディーネは妖しく笑うのだった。

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