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遺跡調査24

「…………あの」

 湖を離れると、ヒヅキは森の終わりを目指して歩みを進める。しかし、ヒヅキは背後から少し距離を置いて付いてくるウィンディーネに、我慢できずに歩みを止めて振り返ると、声を掛けた。

「どうかしたかしら?」

「いつまで付いてくるつもりですか?」

「そうね、明確な場所までは決めていなかったけれど、差し当たり遺跡の中までご一緒させて頂こうかしら」

「……えっと……それはどうして?」

 ウィンディーネの返答に、ヒヅキは困惑しながら問い掛ける。

「面白そうだからよ」

「この森はいいので?」

「? 私は別にこの森に棲んでいる訳ではないのよ? たまたまここに居ただけだもの」

「そう、なんですか?」

「ええ。今の私に明確な居住地はないわよ。基本的に世界中を歩き回っているから」

「では――」

「だけれど、もう長い事退屈していたところだったのよ。世界をどれだけ歩き回ってみても、大して面白いモノがなかったもの」

 残念そうな表情でそこまで言葉にすると、ウィンディーネは急に手を合わせるような仕草を行い、笑みを浮かべてヒヅキの方を見る。その笑みに、ヒヅキは嫌な予感しかしなかった。

「丁度そんな時にヒヅキが現れたのよ! 貴方のその力、とても興味深いわ。それに、ヒヅキの反応も面白いんですもの!」

 満面の笑みを浮かべたウィンディーネに、ヒヅキにしては珍しく、分かりやすく頬を引き攣らせる。ヒヅキはウィンディーネの言う自分の力については興味がそそられたものの、それ以上に厄介な相手に捕まったという気持ちの方が遥かに大きかった。

「ふふ。だから、当面の目的を貴方の観察に費やす事にしたわ」

「そんな勝手な……」

「大丈夫よ、私の時間は永遠ですもの。ヒヅキが死ぬまで観察していても、私にとっては一瞬の出来事だわ」

「なっ――」

 ウィンディーネの発言に、ヒヅキは口を開けたまま絶句してしまう。よもや本当に死ぬまでついてくるとは思えないが、それでもその可能性が完全に無いとは誰が言い切れるだろうか。

「ふふふ」

 そんなヒヅキの反応を楽しそうに眺めるウィンディーネ。

(落ち着け、落ち着け俺。要はウィンディーネを退屈させればいいだけの話だ……が、そもそも彼女は何に対して退屈し、何に対して面白がる?)

 解決策はそれしかないものの、その根本的な判断基準の情報が欠けている事に気づいたヒヅキは、ウィンディーネに背を向けて歩き出す。

(考えろ。今までどんな反応を喜んでいた? 何に対して退屈していた……)

 それを考えるも、ウィンディーネはヒヅキに会った当初から楽しそうにしていたし、退屈だと語った内容も細かな内容は全く含まれていなかった。

(…………今しばらくは様子を見るとするか)

 結局、現状のヒヅキではそう結論付けることしか出来なかったのだった。

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