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遺跡調査19

 魔法の文字の所在を調べたヒヅキは、手にした石像の首を床に置いて、一度他の石像にも目を向けてから、遺跡の外に出た。

「夜、か。……一日潜っていたのか」

 すっかり暗くなっている外の世界に、ヒヅキは一瞬そんなに短い時間しか潜っていなかったかと思ったものの、直ぐに時間が一周した事に思い至り、疲れた声を出した。

 ヒヅキは周囲をぐるりと見渡し、周りの様子が遺跡に入る前と何も変わってない事を確認すると、次の目的地へと足を向ける。

 次の目的の遺跡は、現在地から更に二日北上した場所の近くに在り、プリスの説明では、そこでは昔魔物の姿が確認されたらしいが、現在は魔物は一匹も確認されていないということであった。

(魔物、か)

 ヒヅキはスキアとは戦った事があっても、魔物については文献でしか知らなかった。

(どんな存在なのだろうな)

 それ故に、実物には若干興味があった。しかし、個体によってはスキアと同等とも記されるそんな面倒な存在とは遭遇しないに越したことはなかった。

(ま、現在は居ないらしいけれど……本当かね)

 プリスの説明ではそうなってはいたが、先程の遺跡の動く石像などの説明がなかった為に、どこまで正しいのかは分からない。

(まぁ遺跡の場所さえ分かればそれでいいんだが)

 遺跡内部の情報も重要ではあるが、それ以上に、ヒヅキにとっては遺跡が在る場所の情報の方が重要であった。

(さて、とりあえず何処かで休めればいいが)

 ヒヅキは周囲を確かめるも、町や村の様な類いは確認出来ない。焚き火やかがり火などの人為的に灯されている明かりも見当たらない。周囲は暗いのでそれは確実だろう。

(ただでさえこの辺りはスキアの通り道だったというのに)

 人が居ないどころか、そもそも集落さえもない現状に、ヒヅキは内心でそうぼやく。せめて家の一件でも建っていれば訪ねる事も出来るのだが。

 しばらく歩いたヒヅキは、諦めてその場に腰を下ろす。周囲には足首丈ほどの背の低い草が生えているだけで、木の一本もない。

(風は気持ちがいいのだが)

 草を揺らしてながら優しくヒヅキを撫でる風は、特に気になるにおいも音も運んでこない。

 少し冷たいその風に吹かれながら、ヒヅキは夜空を見上げる。

(曇りか。道理で)

 そこには灰色の雲が夜空を覆っていた。しかし、雨雲というほど厚くはない。それでも星と一緒に月も隠している為に、周囲は結構暗かった。

 それにヒヅキは口元に微かに安堵の笑みを浮かべると、そのまま少し休憩する事にして力を抜く。

(ああ、そうだ)

 ヒヅキは背嚢からガーデンを出る際に準備していた水筒を取り出し、中身の水を飲む。

(まだ二三日は問題なさそうだが、そろそろ食べ物と水の補給の当てを見つけた方がいいな)

 水筒を背嚢に仕舞うと、ヒヅキはそう思い息をついた。

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