遺跡調査18
しばらく考えたヒヅキは、仮面の目の部分に嵌め込まれている魔鉱石に触れてみた。
(何も起きないか。これは外せるのかな?)
そう思い、ヒヅキはその大きな魔鉱石を仮面の内側から押してみる。
(ビクともしないな)
しっかり嵌っているからか、もしくは何かしらの仕掛けでもあるのか、ヒヅキが押してもその魔鉱石は動かない。
今度は反対側から押してみるも、結果は同じであった。
(……はぁ。しょうがないか)
ヒヅキは仮面から魔鉱石を取り外すのを諦めると、仮面をそのまま他の遺物同様に背嚢に仕舞う。
「さて、戻るとするか」
他に道がないのを確認すると、ヒヅキは来た道を戻ることにした。
そのまま炎が噴出する罠があった通路を抜けると、ヒヅキの視界に倒れている襲撃者の姿が目に入り、思わず足を止めた。
(結局、何を持っていこうとしたのだろうか)
奥の部屋には誰も足を踏み入れた形跡がなかったので、遺跡の外に収められている遺物の目録の様なモノがなければ、何が収められていたかは知らなかった可能性が高い。
(ふむ。何かを探してわざわざ入ってきたのか、当て推量で入ってきたのか)
そう考えるも、そもそもヒヅキは襲撃者が何を探しているのかを知らない。そのため、それだけ考えると遺跡を出るための歩みを再開させる。
敵は来る時に一掃出来たのか、帰りは特に襲われるような事態にはならなかった。
そのまま石像が並ぶ通路まで戻ってきたヒヅキは、歩みを止めてその石像を観察してみる。
人間や獣人、エルフにドワーフなどと、種族や性別は違えど人型の像が建ち並ぶ。どれも拳を振り上げたり、蹴り上げるように脚を持ち上げたり、武器を構えていたりと格好は様々ではあるが、どれも戦闘中であるような格好ばかりであった。
(しかし、見事に細部まで造りこまれているな)
表情や筋肉の形、服の皺や髪の線までが丁寧に再現されているその石像に、ヒヅキは深く感心する。
それらを一通り観察し終えると、ヒヅキは石像の横を通り過ぎていく。
「おっと?」
そこで空気の揺らぎ察知したヒヅキは、前に跳びながら振り返る。すると、先ほどまで立っていた場所に一体の石像の拳が振り下ろされていた。
「……これも動くのか」
そう言いながらも、ヒヅキは光球を光の剣に変化させて、すぐさま地を蹴った。
床を殴った石像は身体の向きを変えると、跳んでくるヒヅキを迎撃しようと腕を引いて身体を捻る。しかし。
「やはり遅いな」
石像が引いた腕を突き出す暇を与えずに、ヒヅキは瞬時に石像の首を落とした。
「……石像は全て同じ場所に書かれているのか」
警戒しながら動かなくなった石像に近づくと、ヒヅキは落とした首を拾って魔法文字がどこに在るのか確かめる。すると、首筋の部分に光の剣で横に斬られた魔法文字が刻まれていた。