遺跡調査7
日が暮れて辺りが暗くなった頃、ヒヅキは目的の遺跡を発見する。
(ふーむ?)
暗くてはっきりとは見えなかったものの、何か建築物がそこにあるのだけは分かった。
ヒヅキは周囲を警戒しつつその遺跡に近づいていく。
距離が近くなると、遺跡の全容も見えてきた。
年代を感じさせる石畳が一面に敷かれているその広いだけの空間の中には、一階建ての小さな石造りの家が奥の方にちょこんと一軒だけ建っていた。その光景は妙な不自然さを抱かせる光景であった。
他には、石造りのその家とは反対側の石畳の両角に、見上げる程の高さがある風化した石柱が何とか立っているだけであった。
そこら中の石畳の繋ぎ目からは、無秩序に草が生えている。
ヒヅキは警戒しながらも、石畳の上を静かに歩き、奥の小さな建物に近づく。
(む? 血か?)
ヒヅキはその建物の近くで、暗くても判るほどの血だまりの跡を発見すると、屈んでその血の跡を観察する。
その血の跡はすっかり乾き、地面の染みとなっていたが、それでも濃さや土のかかり具合、草についている様子などから、比較的最近出来たものであることが窺える。
(誰か来たという事か……それよりも、なぜこれほどの出血をした? スキア相手であったなら、これ程大人しい血の跡にはならないだろうし、周囲には人の気配はないが……)
しばらくの間ヒヅキは考えると、目の前の小さな石造りの建物へと目を向けた。
(この先に何か居るのか? それとも何か居たのか)
ヒヅキは気配を探るも、この先に何かが待ち受けている感じはしなかった。
それでもヒヅキは更に警戒を上げつつも、建物の中に足を踏み入れる。
建物の中は何も無く、直ぐに地下へと続く階段が姿を見せた。
(……ここにも血か)
階段に続く血の跡は、先程の外に在った血だまりと同じ者が作ったのだろう。
ヒヅキは気を引き締めてその階段を下りる。階段はそこまで長くはなかったものの、意を決して灯した光球の明かりに映し出された階下の様子は、酷いモノであった。
(戦闘跡に血の跡。真新しいものばかりではないな)
石で壁を補強されたその空間は血で染められ、無数の傷跡が確認出来る。それも引っ搔き傷よりも、槌で殴りつけたような放射状のヒビや破損が多い。
(ここには何が居る? 気配はないし、プリスさんも何も言っていなかったが)
プリスには気を付けてとは言われたが、それだけであった。ヒヅキはいつでも光球を光の剣に変形できるように準備だけはしておく。
今にもむせかえるような血の匂いが鼻を衝きそうなその空間を、ヒヅキはいつも以上に気を張りながら進む。
どうやらそこは一本道であるようで、ただ真っすぐに道が続いている。
(さて、どこまで続いている? 道も痕跡も)
血と戦闘跡に囲まれながら、ヒヅキはその真っすぐな道を歩み続ける。