遺跡調査5
目的の社は小高い山の頂上ではなく、その途中にあった。
社を見つけたヒヅキは、周囲の状況を確認する。
そこは木々を切り開いて出来た場所で、建物とその前にちょっとした広間があった。
(……ふむ、あの穴は何だ?)
建物は大量の土砂によりその大部分が潰えていたが、その土砂の地面に近い部分に、人が屈んで入れるぐらいの横穴が開いていた。
「…………」
それをしばし眺めて思案していたヒヅキは、周辺を警戒しながらもその横穴に近寄っていく。
(何だこの横穴は……?)
それはあまりにも不自然な横穴であった。綺麗にくり貫かれ、表面の一部が僅かに光沢を帯びているそれは、少なくとも自然にあいた穴ではないことが窺える。
ヒヅキは横穴を覗き込んで中の様子を確かめる。
横穴は山を貫通している訳ではないようで、途中で行き止まりになっている。それでも100メートルほどはあいているだろうか、内部は土砂をくり貫いただけのようながらも、結構しっかりとしている。
(掘ったというには中の様子が綺麗すぎるか)
まるで何かを押し入れて固めたような感じの横穴。その横穴の地面には誰かが通った、擦ったような痕跡があった。
ヒヅキはそれを見て少し考えると、確かめる為に中に入ってみることにする。
身を屈めて中を進むヒヅキ。暗い道ではあるが、小さな光球を現出させることで明かりは確保出来ていた。
周囲に目を配るも、特に何も無い道を進み、行き止まりに到達する。
(横穴の横穴? それにこれは……)
横穴の行き止まりには更に小規模な横穴があけられていた。それも現在居る横穴のような綺麗なモノではなく、誰かが己が手で掘ったような不格好なモノ。
這っていかなければ入れないような、その小さな横穴を調べてみると、それは直ぐに終わりを迎えていた。
ヒヅキは身体を地面につけると、這って中に入っていく。身体が全てその小さな横穴に入って少し進むと、行き止まりに到着する。
そこには今度は横穴ではなく、地面に穴が開いていた。それも村長の家で見かけたような床下収納のような穴。
大きさは村長の家のものよりも大きいが、中身が空っぽなのは一緒であった。
(またか……一体何を持っていったんだ?)
そう思いながら穴の中を隈なく調べると、ヒヅキは他に横穴などがあいていないかを確かめて、外に出る。
「…………無駄足か。どこかで服を洗いたいな」
ヒヅキは服や手についた土を簡単に落とすと、疲れたように一つ息を吐き出す。
その後、ヒヅキは一度周囲を見渡し他に何かないかと目を向けるも、何もなかった為に諦めて山を下りることにした。空はそろそろ完全に日が暮れそうな時間であった。