遺跡調査
ガーデンよりやや北西に三日進むと、打ち捨てられた村がある。
そこはスキアの襲撃により放棄された村ではなく、それよりもずっと前には誰も住まなくなった廃村であった。
その村の住人が消えた理由は定かではないものの、その近くには小高い山があり、その山中にはかつて村人が崇めていた神の社が存在する。
しかし、廃村により誰も管理しなくなって忘れ去られた社などボロボロで、そこにはかつて在った神聖さは微塵も存在していなかった。
その半ば朽ち果てた社に近づく一つの影があった。
「…………」
その人物は丈の長いゆったりとしたローブで身を包み込み、フードを目深に被っている為に、顔や種族、性別すら判然としない。
「…………」
小さく顔を左右に揺らし、その謎の人物は何かを探すように、社とその周辺に目線を走らせる。
「……ここではない、のか?」
男とも女ともとれる声を出した謎の人物は、社へと近づく。
「……朽ちてから長い間、人が入った形跡はないな」
注意深く社を観察した謎の人物はそう呟くと、半ば倒壊している社の中へと足を踏み入れた。
ギギ、メキという不安を掻き立てる音を立てる床など気にすることもなく、その謎の人物は社の奥へと入っていく。
「……これより先には行けそうにないな」
建物の半ばで道を塞ぐように倒れている太く長い柱。その先には屋根が崩れ落ちて出来た、瓦礫の山が築かれている。それに加えて、管理されなくなってから山崩れでもあったのだろう、土砂がその瓦礫の上に大量に乗っていた。
謎の人物はしばらくの間それを静かに眺めていたが、踵を返して社から出ると、社から距離を取る。
「……これぐらい離れれば大丈夫か」
そう言うと、謎の人物から少し離れたところに太陽の様な赤白い色の、大人程の大きさをした、棒状の物体が一本出現する。
「……もうここには誰も来ない。ならば、吹き飛ばしたところで何の問題もないはず」
謎の人物は独自の理論を展開させると、その棒状の物体を社目掛けて射出する。
もの凄い速度で射出されたその棒状の物体は社の正面にぶつかるも、速度を落とさず全てを融解して突き進む。
「……ふむ。やはり土相手では満足な結果にはならないか」
棒状の物体の勢いが止まり消失すると、そこには屈めば通れそうなぐらいの大きさの横穴が残る。
「……さて、土が崩れないうちに中の様子を調べてみるか。大丈夫そうなら中に入って調べてみてもいいし」
そう言って謎の人物は横穴に近づくと、屈んで外から横穴の様子の確認をはじめた。
「……意外としっかりとした穴が出来たな」
穴の中の様子を触れたりしてしっかりと確認した謎の人物は、その自分で開けた横穴が安全だと判断すると、慎重に横穴の中に入っていった。