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ガーデン出立2

 翌朝、ヒヅキはまだ暗いうちに目を覚ます。

「…………」

 周囲を見渡しゆっくり上体を起こすと、朝の支度を行う。

 それが終わっても、まだ外は暗いままであった。

「少々早く起き過ぎたな」

 ヒヅキは伸びをすると、窓を開けて外を眺める。雨こそ降ってはいなかったが、暗い雲が空を覆っていた。

「はは、旅立ちの朝にはもってこいだな」

 その空模様に、ヒヅキは少し機嫌のいい声を出す。

(それにしても、元気なものだ)

 遠くからまだかすかに聞こえてくる人の声に、ヒヅキは小さく笑う。

 そのまま景色を目に焼き付けるかのように外を眺め続ける。

 それは空が白みだしても続いていたが、部屋の扉が叩かれた事で区切りとすると、ヒヅキは窓を閉めて廊下に出て、呼びに来たメイドの先導で食堂に移動する。

 食堂で先に来ていたシロッカスとアイリスと挨拶を交わすと、いつもの椅子に移動して腰掛けた。

 朝食の時間は静かに過ぎていき、雑談もいつものように穏やかに行われた。

 まるで最後とは思えない日常ぶりではあったが、最後に軽い別れの挨拶を交わす。

 その後に部屋に戻り荷物を取ると、シロッカスとアイリス達に見送られながら、ヒヅキは薄暗い外に出た。

「…………」

 シロッカス邸から道に出たヒヅキは振り返り、感謝を込めて深く一礼をする。

「……さて、次はプリスさんの所にでも寄ってみるか」

 頭を上げたヒヅキは、背負っている背嚢の位置を直し、シロッカス邸から離れていく。

(流石にガーデナー城は広いからな)

 実際はどれだけ貢献していようとも、表に出ない様に行動しているヒヅキでは、突然訪問したところで王宮の正面からエインを訪ねることは叶わない。

 暫くスキアが囲んでいた頃より活気のあるガーデンを眺めながら、ヒヅキはプリスの屋敷を目指す。

 短い期間に何度も行き来した通い慣れた道を通り、プリスの屋敷に到着したヒヅキは、居るだろうかと思いながらも暗い屋敷の玄関の扉を叩いた。

「…………」

 それから少しの間待ってみたが、何の反応もない。

(留守、かな)

 ヒヅキがそう判断して立ち去ろうかと思った時、屋敷内に人の動く気配を感じて、動かそうとした足を戻す。そのまま気配はヒヅキの居る玄関の方へと移動してくる。そして。

「御待たせ致しました。ヒヅキ様」

 玄関の扉を開いて、侍女服を着たプリスが姿を見せた。

「朝早くからすいません」

 ヒヅキがまずはそう断りを入れると、プリスはヒヅキが背負っている物に目を向ける。

「……ガーデンを出ていかれるのですか?」

「はい。今日はその事で最後にお礼を言いたく参上した次第です」

 どことなく寂しそうなプリスの言葉に、ヒヅキはそう返す。

「そう、ですか」

「エイン殿下は王宮でしょうか?」

「はい」

「そうですか。では、エイン殿下にもお世話になりましたと伝えて頂けますか?」

「勿論で御座います」

「お願い致します。プリスさんにも何かとお世話になりました」

 そう言って、ヒヅキは深く頭を下げた。

「いえ。結局私は何もできなかったのですから、礼は必要ありません」

 そんなヒヅキに、プリスは頭を振る。

「それよりも、まだ御時間はおありですか?」

「え? ええ、後はガーデンを出るだけですから」

 突然のプリスの問いに、ヒヅキが若干怪訝そうに頷くと、プリスは一拍の間を置いて口を開いた。

「では、御渡ししたいものがあります。直ぐに済みますので、今から私に付いて来て下さい」

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