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祭り8

 昼食を食べ終えたヒヅキ達は、持ってきていたハンカチで手を拭いてから立ち上がる。

 パンを包んでいた紙は、パンを購入した露店がゴミとして回収していたので、それを渡して二人はまた人の波に乗った。

「次は何をしましょう?」

 腹が満ちて満足そうなアイリスは、隣を歩くヒヅキを見上げると、わくわくとした弾む口調で問い掛ける。

「このまま流れに乗って順番に見ていきましょうか」

「はい!」

 通りの端の方を歩いているので、アイリスでも片側の露店の様子は目にする事が出来た。

 食べ物を出す店に細々とした雑貨を扱う店、簡単な遊戯を売りにしている店など様々な露店が並んでいるのを見て、ヒヅキはスキアを殲滅してそんなに日が経っていないというのに、よくこれだけ色々と集まったものだと内心で感心する。

 それだけに、これだけでガーデンの復興は直ぐに済みそうだと思わせるものがあった。しかし、今回のスキア襲来でガーデンは南の第一の門が破壊されただけで済んだものの、カーディニア王国全体で見れば(おびただ)しい数の死傷者を出している。砦や街なども多数が荒廃し、無事な部分の方が少ないぐらいだ。それに、まだスキアを完全にカーディニア王国領内から消し去った訳ではない。

(復興、ね)

 更には他国も似たような状態だと聞いているヒヅキは、先に在るのが明るいモノばかりではない事に少し暗澹たる思いを抱く。しかし、おそらくそれは他人が抱くモノと比べれば、あまりに表面的なモノであっただろう。

 それに気づいているかどうかはさて置き、ヒヅキはせめて今ぐらいは楽しんでおこうかと気持ちを切り換える。

 ヒヅキはアイリスと共に何本かの通りを見て歩きながらも、ガーデンを大きく回る様にしてシロッカス邸を目指していた。

 それから夕方になる頃には、ヒヅキとアイリスはシロッカス邸が建っている住宅街まで戻ってきていた。祭り自体は2日間休みなく催されているために、背後からは騒がしい音が止むことなく届いている。

「楽しかったですね」

「はい! とっても楽しかったですわ!」

 ヒヅキの言葉に、アイリスは満面の笑みで応える。ほぼ一日中歩いていたが、その様子からは疲れは全く見受けられなかった。

 住宅街に入ったことで人通りの少なくなった茜色に染まる道を、二人は今日1日見て回った様々な事を振り返りながら賑やかに歩いていく。

 そして、その話はシロッカス邸に到着した後も続き、一度それぞれの部屋に戻って着替えなどを済ませた後も、今度はシロッカスを交えて夕食を食べながら賑やかな時が流れる。

 そんな終始楽しそうな笑顔を浮かべているアイリスの様子を見たシロッカスは、久しぶりに心安らぐ時間を過ごせたのだった。

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