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祭り6

 晩御飯を食べ、シロッカスとアイリスとの歓談を終えたヒヅキは、身体の汚れと疲れを湯で洗い流してから、暗い部屋の中、ベッドの上で横になっていた。

(祭り、か)

 その言葉に、ヒヅキは幼い頃に村で行われた、ささやかな祭りの事を思い出す。

(なんの祭りだったかは忘れたが、あの時は父さんも母さんも居たのか)

 大分曖昧になってきている幼少頃の記憶に、否が応にも時の流れを感じながら、ヒヅキは久しぶりに両親の事を頭に思い浮かべる。

(……もう二人の顔もはっきりとは思い出せないな)

 その事が寂しいとも悲しいとも思えない自分に、ヒヅキは思わず苦笑を浮かべる。

(……明日は朝も早いし、もう寝るか)

 ヒヅキは軽く頭を振ると、そのまま目を瞑って眠りについた。





 翌朝。

 朝の支度や朝食を終えたヒヅキとアイリスは玄関に来ていた。

「御忘れ物は御座いませんか?」

 シンビの確認に、アイリスは財布やハンカチなどをしっかり持っている事を改めて確認する。そして、最後に母親の形見である大事なペンダントが胸元に在るのを服の上から触って確かめた。

「大丈夫ですわ」

「それでは気を付けて行ってらっしゃいませ。ヒヅキさま、アイリスお嬢様の事をよろしく御願い致します」

 アイリスの言葉にシンビは恭しく頭を下げると、ヒヅキにそう付け加える。

「はい。お任せください」

 それにヒヅキは頷くと、シンビに見送られながらアイリスと共にシロッカス邸を後にした。





 シロッカス邸の建つ閑静な住宅街は比較的静かではあったが、朝だというのに遠くからは賑わいが聞こえてくる。

「皆さんもう集まっているのですね」

「そのようですね」

 風が運んでくる賑わいに、アイリスが少しわくわくしているような口調でヒヅキに話し掛けた。

 それから少し歩き、住宅街から次の道に差し掛かったところで、その人混みを目にする。

「沢山居ますわね」

 スキア襲撃前のガーデンを彷彿とさせるその込み具合に、アイリスは驚いたような声を出した。

「そうですね。まだこんなにガーデンに残っていたのですね」

 それに同意しつつ、ヒヅキはアイリスの方に手を差し出す。

「離れてしまわない様に手を繋いでおきませんか?」

 そのヒヅキの申し出に、一度差し出された手に目を落としたアイリスは、ヒヅキの顔をはにかみながら見つめて「はい」 という小さな声と共に、おずおずとその手を取った。

「では行きましょうか」

「はい!」

 そう言ってヒヅキがその掴んだアイリスの手を握ると、それにアイリスは握り返しながら、嬉しそうに返事をしたのだった。

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