祭り3
(これか?)
探していたガーデン周辺の遺跡について書かれていると思しき資料を見つけたヒヅキは、確認の為に立ったままさっと目を通す。
(場所とその遺跡の概要が短く書かれているな)
それは記録というよりも覚え書きの様な資料であった。書かれている字も判読可能ではあるが綺麗とは言い難い。
ヒヅキは近くに置かれていた椅子に腰掛けその資料に目を通していく。
(ここから一番近い遺跡は北側か……エルフの国とは反対側だな)
その資料の全てに目を通したヒヅキは、困ったように押し黙る。
(それに、ガーデン南側には遺跡が一つしかないのか)
それはソヴァルシオンの真東に位置し、森の中に隠れるように入り口がひっそりと建ち、その先の地下に空間が広がっている遺跡なのだとか。
(最も多いのが北側ね)
ガーデン周辺には遺跡が8ヵ所点在していた。その内北側には3つ存在している。
(うーん。エルフの国に先に向かうか、遺跡調査を先に行うか)
ヒヅキは暫し考えると、他の資料を探して本棚に向き合う。
(黒き太陽のような出土品や遺物に関して何か載っている資料は無いかな? 少しでもいいんだがな)
本棚に並んでいる資料を手当たり次第に手に取ると、ヒヅキはそれをもの凄い勢いで目を通していく。
(遺跡の場所もあれで全てでは無いと思うが、流石に出土品や遺物に関しては無いか)
あるのはガーデン周辺の8ヵ所の遺跡を含めたカーディニア王国内の遺跡の所在地の一部と、他国の遺跡の位置と概要が少し載っている資料ぐらいであった。
(遺跡は機密性が高いのか? いや、そもそも黒き太陽なんてモノが見つかる時点で秘せるべき場所か。他国も同じようなものだろうしな。さて、どうしたものか)
ヒヅキは僅かな間思案する。
(殿下に話を聞くには遅いか……しょうがない、一度資料に書かれている遺跡を確認してみるか)
その後も残りの資料も読み漁っていたヒヅキは、気になる記述が書かれている資料を見つける。
(遺跡に魔物?)
魔物とは魔力にあてられた動物が変化した存在で、そこそこ珍しい存在であった。それでいて取り込んだ魔力量により強さの幅が大きく、弱ければ兵士でも数人がかりで倒せるものの、強ければスキア並みの強敵となった。
(そんな存在が居るという事は、遺跡内には魔力の密度が高い場所があるのか?)
黒き太陽のような特殊な遺物がある時点で、その可能性は十分過ぎる程にあった。
(うーん、これは少々厄介なことになるかもな)
これから巡る予定の遺跡で魔物と遭遇した時の事を考え、ヒヅキは内心で溜息をつく。
(それでも調査がされている場所ならば安全性は高いかもしれないな)
ヒヅキはそう考えたものの、現在のスキアの増殖を思い出し、それも希望的観測でしかないなと思い直した。