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祭り2

 今後の方針を決めたヒヅキは、エインから黒き太陽について聞かされた時の事を思い出す。

(遺跡からの出土品、か。やはり遺跡も調べた方がいいかもしれないな)

 そう考えたヒヅキは、一度図書館へ足を延ばしてみようと思い至る。遺跡を調べるにしても、まずは遺跡のある場所が分からなければ始まらない。それに、遺跡についての予備知識もほしかった。

(今日は予定は無いから大丈夫だろう。戦勝祝いの騒ぎが起きる前に済ませておきたいからな)

 そう決めたヒヅキは、まずはシロッカスの元へ向かい、外出する旨を告げる。まだ昼前なので食事の準備などへの影響は少ないだろう。

 連絡を終えると、ヒヅキはシロッカス邸を出て、通い慣れた図書館への道を進む。

 その途中にある商店の建ち並ぶ通りに出ると、スキアを殲滅する直前の寂しい通りが夢だったかの様に人通りが増えていた。それでも本来の混雑さには及ばない。しかし、活気が戻ってきている表れであろう。

 その人混みを縫って進み、ヒヅキが図書館に到着した頃には、昼時になっていた。

 中に入ると、今日の受付は青髪の女性であった。

「いらっしゃいませ。お久しぶりですね。本日はどのような御用でしょうか?」

 人当たりのいい笑みを浮かべて応対する女性に、ヒヅキは遺跡関連の資料が保管されている区画について問い掛ける。

「それでしたらこちらで御座います」

 女性は机の下から取り出した案内図で、目的の資料が保管されている場所を説明した。

「有難う御座います」

 それに礼を言うと、ヒヅキは教えられた区画へと足を向ける。

 その区画は入り口からそこまで離れておらず、直ぐに到着した。

(まずはガーデン周辺の遺跡について知りたいが……)

 図書館と言っても製本されたものばかりではなく、数こそ少ないが、中には資料を纏めているだけで、留めていないものまである。

 そういう資料は全体の枚数はあまりないものの、それでもページ順がバラバラだったりする。

 製本されている物でも背表紙までちゃんと書かれている物は半分ちょっとぐらいしかない。とりあえず纏めて綴っただけ、表紙を付けただけの資料が多かった。

(よく盗られないものだ)

 それを目にする度にヒヅキは毎度そう思うのだが、そもそも図書館を利用する人間はそう多くはない。訪れる半数以上が受付嬢を口説きに来ていると言えば、その少なさが理解できるか。

 それどころか、ヒヅキも最近知った事なのだが、どうやら図書館に訪れる事自体が変人扱いに近いものがあるようであった。それに、元々図書館にはそこまで重要な資料は置かれていないようで、置かれている資料は少し調べれば簡単に手に入る情報ばかりのようだ。

 それでも絶対に盗まれないという事はないのだが、そこはヒヅキの知らない探知系と呼ばれている魔法が用いられているのだとか。

(まぁ後は、識字率の問題か)

 文字の読み書きが出来る平民というのは少ない。それが出来る平民の大半は商人であるのだから、必要が無ければ覚えないのだろう。

 ヒヅキはアートの叔父、つまりは父親代わりのヤッシュの弟が商売人をやっていて、一時期それの手伝いをやらされていた為に、読み書き計算を修得していた。

 それでもガーデンは識字率が周辺の町村よりは遥かに高いので、図書館が人気ないのは、やはり単に必要ないからだろうか。時間的な余裕は周辺の町村の民よりはあるのだから。

(勿体ないな)

 他の感情よりも知識欲が強いヒヅキには、そんなガーデンの民の心は理解出来そうにはなかった。

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