ガーデン防衛64
ヒヅキは朝にシロッカス邸を出たところから話を始める。
それからエイン達と合流し、北側にあったスキアの群れの近くまで単独で向かった事、そこでスキアをおびき寄せる餌を使い、それに釣られて押し寄せてきたスキアの波を強行突破した事、集まったスキアを一網打尽にしてから南側の残党を掃討した事。
それらを所々ぼかしたりとばしたりして話し終えると、アイリスはヒヅキの話に興奮して両の手を強く握っていた。
「本当にスキアを殲滅してしまったのだな」
シロッカスはヒヅキの話に感心とも驚愕ともつかない声音でそう感想を漏らす。もしかしたら呆れも混じっていたかもしれない。
「それで、これからどうするんだい?」
シロッカスの問いに、ヒヅキは数拍の間を置く。
「……以前にお話ししました通りに、数日中にでもエルフの国に向かおうかと考えております」
「え!?」
ヒヅキの返答に、アイリスが驚きに声を漏らす。
しかし、シロッカスはそれを予測していたようで、落ち着いて聞いていた。
「そうか。ここを離れてもまた訪ねてきてほしい。ヒヅキ君ならいつでも歓迎だからね」
「ありがとうございます」
「それにまだ数日はガーデンに滞在するのだろう? その間もここを自分の家だと思って存分寛いでくれ」
「助かります」
ヒヅキはシロッカスに感謝を込めて頭を下げる。
「しかし、大丈夫かね?」
「何がでしょうか?」
「君は今回の功労者だ。それも唯一と言ってもいい存在だ。冒険者は不在で兵士達は何の役にも立たなかったからな」
どこか皮肉のような口調で話すシロッカス。
「それで直ぐに外に出してもらえるのかね? いくら傷や服で普段と印象をずらしたとはいえ、それにも限度というものがあるだろう」
「その時は多少強引にでも」
「君ならそれも可能か……きっと近いうちに祝勝の宴がガーデン中で催される事だろうが、君は招待されていないのかね?」
「そういう話はありましたが、表には立ちたくないので辞退しました」
「そうか……それでも見て回るぐらいはするのだろう?」
「ええ。最後に少しぐらいは見て回ろうかと」
「そうか。では、その時はアイリスと一緒に回ってくれないかね? やはり護衛は必要だからね」
「お、御父様?」
「分かりました。では、その時はアイリスさんと一緒に回らせて頂きます」
「ああ、娘をよろしく頼む」
「え? あ! よ、よろしくお願いしますわ! ヒヅキさん」
ヒヅキが近いうちにガーデンを離れてしまうことに落ち込んでいる内に決まってしまったそれに驚きつつも、アイリスは嬉しそうな笑みを浮かべたのだった。