ガーデン防衛61
黒き太陽の消失を確認したヒヅキは、目の前に出来た大穴を突っ切りガーデンを目指す。
大穴は広く深くはあったが、規模の途轍もなく大きな落とし穴程度で、底が見えないほど深い訳ではない。おかげで大穴を突っ切るのはさほど難しくはなかった。
そうしてヒヅキがガーデンに到着したのは、昼もそれなりに過ぎてからであった。
城壁上にエインの姿を確認したヒヅキは、目の前で片膝を着いた状態で動きを止める。
それに周囲の兵士はどよめいた。兵士の視点からだと、突然膝を着いたヒヅキが現れたようにしか見えなかったのだ。
「戻ったな。眩い光であったが、首尾はどうなった?」
そんな中にあっても少しも揺らぐことなく、エインは目の前で片膝を着いて頭を垂れているヒヅキに問い掛ける。
「北・西・東側のスキアは殲滅が完了致しました。誘因餌の消失も確認済み。これより南側スキアの掃討に移行してもよろしいでしょうか?」
ヒヅキの報告に、周囲の兵士が先程とは別の意味でざわめく。その中にはカレジも含まれていた。
「ああ、構わない。今すぐ残りのスキアを殲滅せよ」
「はっ!」
エインの言葉に了承の言葉を大きく返すと、ヒヅキは瞬時に移動を開始する。
ヒヅキは目にも止まらぬ速さでガーデンの第一城壁上を兵士を避けながら南側へと駆け抜けると、スキアに近い地点で外に飛び降りた。
(確認出来ているスキアの数はあと少し。魔力残量は既に半分を下回っているが、スキアの数が少ないから殲滅する分には問題ないな)
スキアの許まで一直線に駆けるヒヅキは、一匹、また一匹と残ったスキアを確実に屠っていく。
(集まっていないと駆けるのに苦労するな)
ヒヅキがガーデン南側の広大な範囲を駆けている内に、すっかり陽が落ちてしまっていた。
いくらヒヅキが目にも止まらぬ速さで地を駆けることが出来ようとも、瞬間移動している訳ではないので、移動にはそれ相応の時間を要した。
(これで、残りは二匹)
更に一匹スキアを消し去ると、残り二匹のスキアの位置を確認する。これを倒せばガーデン周辺の敵は一掃出来たことになる。
ヒヅキは疲労を感じながらも、あと少しと己に言い聞かせて地を駆ける。既に魔力残量は心許ないが、移動して二匹のスキアを滅する程度の余力は十分に残していた。
(殲滅して報告してシロッカス邸に戻る。ギリギリ保てそうかな)
スキアの方へと駆けながらも、ヒヅキは残りの予定を頭に思い浮かべる。それとともに魔力残量の計算も行っていると、その間に次のスキアの許に到着した。
ヒヅキは辿り着いたと同時に光の剣でそのスキアをあっさり消滅させると、最後の一匹の方へと移動を開始した。