ガーデン防衛59
黒き太陽の破壊と共に現れた黒い煙のような炎へとスキア達が殺到しだす。
ヒヅキは急いで離脱するも、殺到するスキアの波にぶつかってしまう。
(出来るだけ魔力は消耗したくないんだが)
そうは思うも、不可避な遭遇戦に諦めて光の剣を現出させる。
(ここを抜ければ何とかなるだろう)
黒き太陽に殺到しているのでヒヅキにあまり興味を持っていないようで、すれ違う際に攻撃されるぐらいであった。それでも普通は十分過ぎる脅威なのだが。
光の剣を現出させはしたものの、ヒヅキは回避を基本に行動する。
(人混みも酷かったが、スキアの川を遡上するのはそれ以上だな)
息苦しさを覚えながらも、ヒヅキはただひたすらに駆ける。前回の襲撃の時とは違い、黒き太陽を使用した分、今回の勢いはあまりに激しかった。
(くっ、これは予想以上にしんどいな)
想定以上の激流に、ヒヅキは僅かに顔を歪ませる。それでも、ヒヅキにとってその激流は抜けられない程ではなかった。
回避に専念しつつも、回避するのが難しい部分では光の剣でスキアを消滅させて、ガーデンとは逆方向に駆け続ける。
(こちら側からやって来るスキアの数が少ないな。これ以上の増援はないのか?)
ヒヅキの考え通りだった場合、ここで一気に殲滅出来さえすれば、カーディニア王国に侵入しているスキアの大半を消し去る事が叶うという事を意味していた。
奥に見えてきた川の終わりに、ヒヅキは周囲の索敵を密に行う。
(順調にガーデン周辺からなだれ込んできているな。ここまでは作戦通りか。誤算もあったが、それ以上に想定よりも増援が少ないのは喜ばしい事だ)
スキアの流れから完全に抜けだせたヒヅキは、スキア達から十分な距離を取って振り返ると、状況を確認する。
(黒き太陽はまだ発動し続けているな。スキアの集まり具合はまだ足りないか)
ガーデン周辺に存在するスキアの気配を探り、北側だけではなく東側と西側のスキアも残らず釣れているのを捉えはしたが、動きが鈍いのも一緒に捉えていた。
(後は南側だけだが、そう何もかもが上手くはいかないか)
距離が開きすぎているからか、残る南側に居る少数のスキアはヒヅキが使った黒き太陽に少しも反応してはいなかった。
しかし、一応こういう場合の想定はしている。その場合はヒヅキが後で残党を狩りに行かねばならないのだが。
(さて、スキアが攻撃範囲に集まりきるまでもう少し時間が掛かるな。黒き太陽がまだ燃え続けてくれるのを願って、ここで少し休憩するとしようか)
大きく息を吸ったヒヅキは、それを盛大に吐き出しながら、僅かに出来た時間を休息に充てる事にした。