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ガーデン防衛58

 ヒヅキはスキアの群れを強引に突っ切るのではなく、少々迂回して背後に回る事にしていた。その道中、ヒヅキは作戦の内容を脳裏に思い浮かべる。

 今回の作戦は実に単純であった。

 まず始めに北側のスキアの群れが居る奥地へと向かう。

 周囲にスキアしか居ない場所に辿り着いた後、そこで黒き太陽を使用する。

 黒き太陽に釣られてガーデン周辺に居るスキアが集まってくるので、集まったスキアを一気に消し去るというモノであった。

 ただ、それには問題もあった。

 まず、目的地までスキアの群れをどうにか掻い潜るか、倒さなければならない。別にスキアの群れの中で黒き太陽を使用する必要はないが、スキアの近くで発動しなければ意味がない。

 次に、遮る物が何もないので、黒き太陽を使用した瞬間にスキアが大挙して押し寄せてくるので、黒き太陽を使用した者はほぼ確実に死ぬ。

 最後に、一ヵ所に集めたスキアを一気に屠れるだけの火力が必要になってくる。最低でも黒き太陽が効果を発揮している間にスキアを殲滅できなければならない。

 数を揃えられるのであれば別ではあるが、これらの条件を単騎、もしくは少数で克服出来る者は冒険者の中でもごくごくわずかしか存在しない。そして、現在のガーデン内でこの作戦を実行できる者は、立案し提案した本人であるヒヅキ一人しか居なかった。

 これが成功してしまうと、ヒヅキは自身の戦闘能力を世間に露呈させる事になるのだが、それを承知の上での行動であった。その為、ヒヅキはこれが終わればすぐにガーデンを去るつもりでいる。だが、エインの背後にその武力がある事だけは印象付けなければいけないだろう。そうでなければ何も変わらない。

 その為にヒヅキは、今回魔砲を使用する際に地形に対する配慮をほとんどしない事にしていた。これについては、例えガーデンの北に大きな穴があこうとかまわないというエインの許可を事前にもらっている。

 つまり、ガーデンに戻る事と討ち漏らしがあった場合を考えはするものの、ほとんど全力で魔砲を放てるという事であった。

 それ故に、現在は無駄な戦闘を避けるように移動していた。そのヒヅキは内心、ほんの僅かではあるが出力を抑えずに魔砲を放てることを楽しみにしていた。

 時刻が昼になるかならないかという頃になって、ヒヅキは目的の場所に到着する。

 黒き太陽を使用する為に速度を緩めた瞬間に近くに居たスキアに気づかれたものの、今から黒き太陽を使用してスキアを呼び寄せるのでそれは些細な出来事であった。

 そしてヒヅキは立ち止まることなく、目的の辺りを過ぎ去るついでに黒き太陽が入っている細長い透明な容れ物を破壊した。

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